脇汗が止まらないのはなぜ?腋窩多汗症の原因と改善方法を旭川のペインクリニック専門医が解説
2026.03.27ペインクリニック内科・麻酔科

脇汗が止まらなくて、色の濃い服しか着られない。会議中や人前に出るたびに汗ジミが気になる。夏でもないのに、気づいたら脇がびしょびしょになっている、そんな悩みを抱えながら、「汗かきな体質だから仕方ない」と諦めていませんか。
脇汗が止まらない状態には、医学的な背景があります。それが腋窩多汗症(えきかたかんしょう)です。体質と切り捨てる前に、原因と改善方法を正しく知ることが大切です。
この記事では、ペインクリニック専門医の立場から、脇汗が止まらない原因・腋窩多汗症のしくみ・セルフケアから医療的治療まで、順を追って解説します。
脇汗が止まらない・ひどい状態は「腋窩多汗症」かもしれません
腋窩多汗症とは?ワキガとの違いも含めて解説
腋窩多汗症とは、脇の下(腋窩部)に体温調節の必要量を大きく超えた過剰な発汗が生じ、日常生活に支障をきたす疾患です。多汗症のなかでも、特定の部位にのみ発汗が集中する「局所性多汗症」に分類されます。
よく混同されるのがワキガ(腋臭症)ですが、両者は別の疾患です。ワキガはアポクリン腺という汗腺から脂肪やたんぱく質を含む汗が分泌され、皮膚常在菌と反応することで独特の刺激臭が生じます。一方、腋窩多汗症はエクリン腺からほぼ無臭の水分性の汗が大量に分泌される状態です。脇汗が多くても、ツンとした臭いが強くない場合は腋窩多汗症である可能性が高いといえます。
なお、腋窩多汗症でも長時間にわたって皮膚が湿潤状態に置かれると、皮膚常在菌が繁殖し、いわゆる「汗くさい」状態になることはあります。ワキガとは性質が異なりますが、においの悩みが重なる方も少なくありません。
あなたの脇汗は多汗症?セルフチェックリスト
以下の診断基準の項目を確認してみてください。「明らかな原因がないまま6ヵ月以上、局所的に過剰な汗をかいている」ことを前提に、以下のうち2項目以上に該当する場合は腋窩多汗症の可能性があります。
- 最初に過剰な発汗が起きたのが25歳以下だった
- 左右の脇が同じように汗ばんでいる
- 睡眠中は脇汗が落ち着いている
- 週に1回以上、過剰な発汗のエピソードがある
- 家族に同様の悩みを持つ人がいる
- 脇汗によって日常生活や仕事・人間関係に支障が出ている
あてはまる項目が多い場合は、医療機関への受診をご検討ください。
脇汗が止まらない原因はなぜ?交感神経との深い関係
原因①|原発性局所多汗症(交感神経の過剰興奮)
腋窩多汗症の多くは、原発性局所多汗症に分類されます。発汗を調節している交感神経が過剰に興奮することで、体温調節とは無関係に脇汗が止まらない状態が続きます。汗腺そのものに異常があるわけではなく、神経からの「汗を出せ」という信号が過剰に発せられることが問題の本質です。
医学的にもまだ完全には解明されていない部分がありますが、自律神経の乱れや交感神経の興奮しやすさが関与していると考えられています。
原因②|遺伝的・体質的な要因
腋窩多汗症には家族内発症の傾向があり、遺伝的な素因が関わっていることが知られています。「親や兄弟も脇汗がひどい」という方は珍しくありません。ただし遺伝的背景があっても、適切な治療によって症状の改善が期待できます。
原因③|ストレス・緊張による精神性発汗
脇の汗には、体温上昇に伴う「温熱性発汗」と、緊張や不安・精神的ストレスに反応する「精神性発汗」の2種類があります。健常な方でも緊張すれば脇汗は出ますが、腋窩多汗症の方はこの反応が過剰であり、さほど緊張していない状況でも脇汗が止まらないことがあります。
「大事な場面ほど汗がひどくなり、それがさらに緊張を生む」という悪循環に陥るケースも多くみられます。
原因④|疾患・薬剤による続発性多汗症
一部のケースでは、甲状腺機能亢進症・糖尿病・脳梗塞・末梢神経障害などの疾患や、薬剤の副作用として多汗症が誘発されることがあります(続発性局所多汗症)。急に症状が現れた場合や、他の体調変化を伴う場合は、内科的な原因の有無を確認することが先決です。
脇汗が止まらない状態を放置するリスク
衣服・においへの影響
脇汗が多い状態が続くと、衣服への汗ジミが常態化し、白い服や色の濃い服が着られなくなるなど、選べる服が制限されます。また、長時間の湿潤状態は皮膚常在菌の繁殖を促し、においの原因になることもあります。
精神的ストレス・生活制限の悪化
腋窩多汗症は外見上わかりやすいため、他者の目が気になり、人前に出ることへの抵抗感や自己嫌悪につながるケースが少なくありません。日本国内では、腋窩多汗症の方のうち重症と判定される割合は過半数にのぼると言われており、日常生活に大きな支障があるにもかかわらず受診していない方が多いことが示唆されています。
引用:https://www.maruho.co.jp/kanja/wakiase/symptom/
腋窩多汗症の改善方法|段階別に選べる治療の選択肢
日常でできるセルフケア
通気性のよい素材の衣服を選ぶ、市販の制汗剤(塩化アルミニウム系)を使用するなど、日常的なケアは症状の不快感を軽減するうえで補助的に有効です。ただし、これらは腋窩多汗症そのものへの治療ではなく、あくまで日常の管理手段として位置づけるのが現実的です。
保険診療①|抗コリン外用薬(エクロックゲル・ラピフォートワイプ)
交感神経から放出されるアセチルコリンという物質の伝達を脇の皮膚で阻害する外用薬です。エクロックゲルとラピフォートワイプの2種類があり、いずれも保険適用で脇汗への使用が認められています。毎日塗布・貼付するタイプで、継続使用によって発汗を抑制する効果が期待されます。手・足の皮膚は表皮が厚く薬剤が浸透しにくいため、これらの外用薬は脇への使用に限られます(手足への適応外)。
副作用として、塗布部位の皮膚刺激感が生じることがあります。
保険診療②|プロバンサイン内服
全身の発汗を抑制する抗コリン薬の内服治療です。保険診療で処方できます。口渇・便秘・目のかすみなどの副作用が出ることがあるため、症状と相談しながら継続するかどうかを判断します。
保険診療③|ボツリヌス注射(脇汗への適応)
ボツリヌストキシン製剤を脇の皮内に注射し、汗腺への神経伝達を一時的に抑制する治療法です。脇への使用は保険診療の対象です(手・足への適応は保険外)。効果の持続期間は個人差がありますが、数ヵ月程度が目安とされています。副作用として、注射部位の一時的な筋力低下・内出血が生じる場合があります。費用は診察内容により異なりますので、受診時にご確認ください。
保険診療④|交感神経ブロック(星状神経節ブロックなど)
腋窩多汗症に対するペインクリニックのアプローチとして、交感神経ブロックがあります。発汗を支配している交感神経の伝達を局所麻酔薬によって一時的に遮断することで、脇汗の過剰反応を抑制することを目的とした治療法です。
代表的なものに星状神経節ブロックがあります。首の付け根付近に位置する星状神経節(上肢・胸部の交感神経が集まる神経のかたまり)に対して局所麻酔薬を注射し、交感神経の過剰な興奮を抑えます。入院不要で外来での処置が可能です。
効果の持続期間や適応については個人差があるため、診察時に症状・希望を踏まえてご説明します。
皮膚科とペインクリニックの腋窩多汗症へのアプローチの違い
脇汗の悩みで最初に思い浮かぶ受診先として、皮膚科を挙げる方が多いかもしれません。皮膚科では抗コリン外用薬(エクロックゲル・ラピフォートワイプ)の処方や、ボツリヌス注射など皮膚・汗腺に直接作用する治療が中心となります。日常的に継続できる治療として有効であり、軽症〜中等症の腋窩多汗症に対しては有力な選択肢です。
一方、ペインクリニックが専門とするのは神経そのものへのアプローチです。腋窩多汗症の根本には交感神経の過剰興奮があることから、当院では星状神経節ブロックなどの交感神経ブロックを含む治療の選択肢をご提案できます。外用薬や内服薬で十分な改善が得られなかった場合や、できるだけ根本的な原因に近いところから治療したいという方にとって、ペインクリニックは有効な選択肢となります。
また、腋窩多汗症と同時に足汗(足蹠多汗症)を抱えている方の場合、それぞれの部位に応じたブロック治療を組み合わせて対応できる点も、ペインクリニックを専門とする当院の強みです。
「神経ブロックでの治療に興味がある」という方は、ぜひ当院にご相談ください。
ペインクリニック専門医だからできる腋窩多汗症へのアプローチ
神経ブロックを専門とするペインクリニックで診る意義
腋窩多汗症の根本には交感神経の過剰反応があります。当院は日本ペインクリニック学会専門医・日本専門医機構認定麻酔科専門医が診療にあたるペインクリニックであり、自律神経・交感神経への直接的なアプローチを専門としています。外用薬や内服薬で改善が限られている場合や、手術を視野に入れたい場合など、症状の程度と希望に応じて治療の選択肢を整理しご提案します。
「脇汗はどこに相談すればいいかわからない」という方も多いですが、ペインクリニックは神経と発汗の関係に精通した専門領域です。
手掌・足底多汗症を併発している場合も同時に相談できる
腋窩多汗症の方のなかには、手汗(手掌多汗症)や足汗(足蹠多汗症)を同時に抱えているケースも少なくありません。当院では複数部位の多汗症を同時に診察し、それぞれの症状の程度に合わせて治療方針を立てることができます。複数の悩みをまとめてご相談ください。
関連記事:足蹠多汗症の原因と対策解説
関連記事:手掌多汗症の原因と対策解説
まとめ|脇汗が止まらないなら、旭川のいいだメンタルペインクリニックへ
脇汗が止まらない原因の多くは、交感神経の過剰反応による腋窩多汗症です。体質として諦めずに、症状の程度に応じた治療の選択肢を知ることが改善への第一歩となります。
抗コリン外用薬・内服薬・ボツリヌス注射・星状神経節ブロックまで、保険診療で受けられる選択肢が複数あります。当院ではペインクリニック専門医が一人ひとりの症状と生活状況を丁寧に確認したうえで、適切な治療方針をご提案します。
旭川で腋窩多汗症・脇汗の悩みをお持ちの方は、まずお気軽にご相談ください。
著者情報
いいだメンタルペインクリニック
ペインクリニック内科・麻酔科
理事長 飯田 高史
- 医学博士
- 麻酔科標榜医
- 日本専門医機構認定麻酔科専門医
- 日本麻酔科学会麻酔科認定医
- 日本ペインクリニック学会専門医