椎間板ヘルニア術後の仕事復帰はいつから?段階的な職場復帰のポイント

2026.01.15ペインクリニック内科・麻酔科

腰椎椎間板ヘルニア術後の仕事復帰について

腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けた後、「いつから仕事に復帰できるのか」という不安を抱える方は少なくありません。手術後の回復には個人差があり、職種によっても復帰時期は大きく異なります。

本記事では、調査に基づく389名の追跡研究データをもとに、術後の仕事復帰に影響する要因を解説します。職場復帰を目指す方にぜひ参考にしていただければと思います。

腰椎椎間板ヘルニア術後の仕事復帰までの平均期間

フィンランドで実施された「フィンランド公共部門調査(FPS)」では、腰椎椎間板ヘルニアの切除術を受けた公務員389名(男性111名、女性278名、平均年齢46歳)を12ヶ月間追跡しました。

この研究の特徴は、対象者の職種の幅広さにあります。

10の自治体と6つの病院地区から参加した約15万人の一定の条件でくくられた人々のグループから抽出されており、市長や医師などの高度専門職から、清掃員、看護師、教師まで、多様な職業が含まれています。

つまり「デスクワーク中心の人だけ」「肉体労働者だけ」といった偏りのない、実社会を反映したデータとなっております。

腰椎椎間板ヘルニア術後の仕事復帰に関する調査結果(概要)

項目内容
調査期間1997年〜2005年
手術実施期間1999年〜2010年
職場復帰率95%
平均復職期間約78日(約2.5か月)
最短復職期間13日
最長復職期間366日(約1年)
他研究との一致過去の複数研究とほぼ同様の結果
注意点復職時期には大きな個人差あり

仕事復帰を遅らせる3つのリスク要因

この調査では統計解析を用いて、復職の遅れに関わる要因を3つ特定しました。

1. 年齢〜50歳以上は要注意

40歳未満の患者は、50歳以上と比較して1.5倍早く復職していました。

これは高齢の方に比べ若年層の組織の修復力や体力の差が影響すると考えられます。

ただし高齢の方でも良好な経過をたどる方もいます。個々の身体状況によって異なります。

2. 職業の種類〜肉体労働は復帰に時間がかかる

職業を「上級非肉体労働」「下級非肉体労働」「肉体労働」の3群に分類した結果、上級非肉体労働者は肉体労働者と比べて1.6倍早く復職していました。

デスクワーク中心の職種と、重量物を扱う職種では、腰への負担が大きく異なります。

当然ながら、術後の腰椎への物理的ストレスが少ない職種ほど、早期復帰が可能になります。

3. 術前の病欠期間〜30日以内がカギ

手術前の1年間に30日以上の病欠があった患者は、それ以下の患者と比べて復職が遅れる傾向がありました。

術前の病欠が短い群は、長い群と比較して1.3倍早く復職しています。

これは症状の重症度や慢性化の程度を反映していると推測されます。長期間痛みに苦しんでいた場合、組織の変性が進行している可能性があるのです。

意外にも関係なかった要因とは

一方で、多くの方が気にされる以下の要因は、統計的に復職と関連がありませんでした。

・性別

・婚姻状況

・肥満(BMI30以上)

・喫煙習慣

・運動不足

・多量のアルコール摂取

・併存疾患(糖尿病、喘息、関節リウマチなど)

・精神的苦痛

・抗うつ薬や鎮痛剤の使用

「太っているから」「タバコを吸っているから」と復職を諦める必要はないのです。

ただし、これらの要因が術後の合併症リスクに影響しないわけではありません。あくまで「復職時期」との直接的な関連が見られなかったという結果です。

健康的な生活習慣は、長期的な予後改善には重要であることに変わりありません。

腰椎椎間板ヘルニア術後の段階的な職場復帰プランの立て方

スムーズな職場復帰を実現するには、段階的な復帰プランを立てることが重要です。焦って無理をすると、症状の悪化や再発につながる可能性があります。

医師との復帰時期の相談

現在の身体状況やリハビリテーションの進捗状況を踏まえ、仕事復帰の時期や方法を相談しましょう。

医師からの診断書があれば、職場との調整もスムーズに進みます。復帰後も定期的に診察を受け、経過を追うことが大切です。

職場との調整と配慮の依頼

仕事復帰に向けて、勤務時間や業務内容などの調整が必要となる場合もあります。

産業医がいる職場であれば、産業医への相談も選択肢に入れましょう。専門的な視点から、適切な復帰プランを提案してもらえます。

段階的な勤務時間の延長

復帰初日から通常勤務を行うのではなく、段階的に勤務時間を延ばしていくことが推奨されます。

例えば、最初の1週間は半日勤務、次の1週間は6時間勤務、その後通常勤務へと移行するなど、体調を見ながら無理のないペースで進めましょう。

腰椎椎間板ヘルニア術後の再発を防ぐための日常生活の注意点

腰椎椎間板ヘルニアは、適切なケアを怠ると再発する可能性があります。職場復帰後も、日常生活での注意が必要です。

正しい姿勢の維持

正しい姿勢を保つことは、腰椎椎間板への負担を減らす基本です。座る際は背筋を伸ばし、深く腰掛けるようにしましょう。

長時間同じ姿勢を続けないことも重要です。定期的に姿勢を変え、軽いストレッチを行うことで、腰への負担を分散できます。

適度な運動の継続

術後のリハビリで学んだ運動は、復帰後も継続することが大切です。腰回りの筋肉を強化することで、腰椎椎間板への負担を軽減し、再発を予防できます。

ウォーキングや水泳など、腰に負担の少ない有酸素運動もおすすめです。ただし、激しい運動や腰をひねる動作は避けましょう。

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腰椎椎間板ヘルニア術後の仕事復帰に関するよくある質問

Q1. 手術後、最短でいつから働けますか?

A. 研究によると最短13日で復職した例があります。ただし職種や個人差が大きいため、主治医と相談しながら判断することが妥当です。デスクワークであれば術後2〜4週間、肉体労働では2〜3ヶ月が目安となるケースが多いです。

Q2. 建設業で重いものを持つ仕事です。復職は難しいでしょうか?

A. 肉体労働者の復職率も95%と高い結果でした。ただし上級非肉体労働者(医師、教師など)と比較すると復職までの期間は長くなる傾向があります。職場での作業軽減や配置転換を検討することが肝要です。

Q3. 看護師です。手術後どのくらいで職場復帰できますか?

A. 看護師は「下級非肉体労働」に分類され、肉体労働者と比べて1.3倍早く復職する傾向がありました。ただし夜勤や患者移乗など身体的負担を伴う業務があるため、段階的な職場復帰が現実的です。

Q4. 術前に2ヶ月休んでいます。手術後の復職も遅れますか?

A. 術前1年間に30日以上の病欠があった方は、それ以下の方と比べて復職がやや遅れる傾向があります。しかし最終的に95%が復職していますので、術前の病欠期間が長くても復職は十分可能です。術後のリハビリテーションを適切に行うことが鍵になります。

Q5. 仕事を休めない場合はどうすればいいですか?

A. 無理な早期復帰は再発リスクを高める恐れがあります。術前の病欠が30日未満の方は復職が1.3倍早い傾向がありました。つまり「症状を我慢して働き続ける」より「適切なタイミングで手術を受ける」方が、結果的に早期復帰につながる可能性があります。

まとめ〜段階的な復帰で健康的な職場復帰を

本データから、腰椎椎間板ヘルニア手術後の仕事復帰について、明確な見通しが示されています。復職率は95%と高く、平均復職期間は約78日(約2か月半)で、多くの方が比較的早期に職場復帰しています。

復職時期に影響する要因としては、年齢、職種、術前の病欠期間が挙げられ、50歳以上の方や肉体労働に従事している方、手術前に長期間休職していた方では、やや時間を要する傾向があります。

一方で、性別、肥満、喫煙、運動不足、精神的苦痛などは、復職時期との明確な関連は認められていません。重要なのは、復職の早さよりも無理のない回復と段階的な復帰です。適切な治療時期と計画的な職場復帰が、良好な回復と再発予防につながります。腰椎椎間板ヘルニアの治療や術後の管理について気になる方はぜひ一度いいだメンタルペインクリニックにご相談ください。

参考文献:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1878875018312907?via%3Dihub

著者情報

いいだメンタルペインクリニック

ペインクリニック内科・麻酔科

理事長 飯田 高史

  • 医学博士
  • 麻酔科標榜医
  • 日本専門医機構認定麻酔科専門医
  • 日本麻酔科学会麻酔科認定医
  • 日本ペインクリニック学会専門医