腰椎椎間板ヘルニアでもできる筋トレ|悪化を防ぐための注意点と安全に続けるコツ
2025.11.22ペインクリニック内科・麻酔科

腰椎椎間板ヘルニア患者に必要な筋トレの基本知識
「ヘルニアと診断されたけど、筋トレは続けても大丈夫なのだろうか?」
このような疑問を抱える患者さんは少なくありません。結論からお伝えすると、適切な方法で行う筋トレはヘルニアの症状改善に効果的です。ただし、誤った方法で行うと症状を悪化させるリスクもあります。
ヘルニア改善に効果的な筋トレには主に「体幹トレーニング」と「下半身トレーニング」の2種類があります。これらを適切に行うことで、腰への負担を軽減し、症状の緩和が期待できるのです。
本記事では、ヘルニア患者さんが安全に筋トレを行うための7つの注意点と効果的なメニューを解説します。痛みに悩まされている方も、これから再発予防に取り組みたい方も、ぜひ参考にしてください。
腰椎椎間板ヘルニアに効果的な筋トレの種類と選び方
椎間板ヘルニアの改善に役立つ筋トレは、大きく以下の2種類に分けられます。
体幹トレーニング:腹横筋・多裂筋など体幹の安定性を高め、腰椎を支える力を強化
下半身トレーニング:大殿筋・ハムストリングスなどの大きな筋肉を使い、腰への負担を分散
それぞれの役割を理解し、自分の症状や体力に合わせて取り入れていくことが重要です。
体幹を安定させる筋トレメニュー
体幹トレーニングは、腰を支える筋肉を強化し、椎間板への負担を軽減する効果があります。特に腹横筋や多裂筋といった深層筋を鍛えることで、背骨の安定性が高まります。
おすすめのメニューは以下の通りです。
ドローイン
仰向けで膝を立て、息を吐きながらお腹をへこませる動作を5秒キープ×10回行います。腹横筋を効果的に鍛えられます。

プランク
うつ伏せの状態で肘と足先で体を支え、体を一直線に保ちます。20〜30秒を目安に行いましょう。

バードドッグ
四つん這いの姿勢から、対角の手と足を同時に伸ばす動作を片側10回ずつ行います。

下半身を強化する効果的なトレーニング
下半身の筋力を高めることで、腰への負担を分散させる効果が期待できます。特に大臀筋や大腿四頭筋を鍛えると、日常動作での腰への負担が軽減されます。
下半身トレーニングの効果的なメニューには以下のものがあります。
ヒップリフト
仰向けで膝を立て、お尻を持ち上げる動作を繰り返します。お尻の筋肉を意識しながらゆっくり行いましょう。

レッグプレス
ジムのマシンを使い、足でプレートを押す運動です。負荷は軽めに設定し、フォームを重視します。

ウォールシット
壁に背中をつけて膝を90度に曲げ、その姿勢を20〜30秒キープします。これを3セット行うと効果的です。

どの筋トレも無理のない範囲で継続することが重要です。
筋トレが腰椎椎間板ヘルニアの症状改善に効果的な理由
なぜ筋トレがヘルニアの症状改善に効果的なのでしょうか。
筋力強化による椎間板への負担軽減
ヘルニアの症状を和らげるためには、腰を支える筋肉を鍛えることが重要です。腹筋や背筋が強化されると、椎間板への負担が分散され、痛みの軽減が期待できます。
特に重要なのは、腹横筋や多裂筋といった体幹深部の筋肉です。これらは「インナーユニット」と呼ばれ、背骨を安定させる役割を担っています。適切なトレーニングでこれらの筋肉を強化すると、日常生活での腰への負担が大幅に軽減されます。
血流促進による回復力の向上
適度な運動は血流を促進し、ヘルニアの回復を助ける効果があります。血流が滞ると筋肉が硬くなり、腰への負担が増加してヘルニアが悪化する可能性があります。
運動によって血流が改善されると、酸素や栄養素が筋肉に行き渡りやすくなり、炎症の鎮静や組織の回復が促進されます。また、適度な運動は自然な鎮痛物質「エンドルフィン」の分泌も促進するため、痛みの軽減にも役立ちます。
ウォーキングやストレッチ、軽いヨガなど、血流を良くしながら無理なく筋力を鍛えられるトレーニングは、ヘルニア患者さんに特におすすめです。これらの運動は関節や筋肉に過度な負担をかけにくく、継続しやすいというメリットもあります。
腰椎椎間板ヘルニア患者が筋トレで注意すべき7つのポイント
ヘルニア患者さんが筋トレを行う際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを守ることで、安全に効果的なトレーニングを続けることができます。
1. 高負荷トレーニングはフォームを徹底し、重量は控えめに
スクワットやデッドリフトは効果的な反面、腰への負担が大きい種目です。
まずは軽い負荷でフォーム習得を優先し、背中を丸めず中立姿勢をキープしましょう。
痛みが出る場合は即中止し、無理な重量への挑戦は避けます。
2. 上体起こしなど「腰を大きく曲げる腹筋トレーニング」は避ける
クランチ・シットアップなどは椎間板に圧が集中しやすく、悪化リスクがあります。
代わりに プランク・ドローイン など、腰椎を中立で保てる体幹トレーニングを選ぶと安全です。
3. 腰を反らしすぎる動作(過伸展)は控える
ブリッジやバックエクステンションのように腰を強く反らす運動は椎間板に負担がかかります。
大きな可動域を使うよりも、「痛みの出ない範囲」で小さめの動作を心がけます。
4. 反動や勢いを使った動作は避け、ゆっくり丁寧なフォームで行う
急激な動き・ジャンプ・勢いを利用した動作は、腰に瞬間的な負荷がかかります。
全ての動きをゆっくり・コントロールして行うことが安全性を高めます。
5. 痛み・しびれが出たらすぐ中断する
「我慢すれば鍛えられる」という考えは禁物です。
足への痛みやしびれが広がる場合は、神経への刺激が強くなっているサイン。
トレーニングは中断し、症状が続く場合は医師に相談しましょう。
6. 体を守るためのウォームアップとクールダウンを欠かさない
筋トレ前後の準備は、ヘルニア患者にとって特に重要です。
ウォームアップでは 軽いウォーキング・股関節や背中周りのストレッチ を行い、
クールダウンでは使った筋肉をやさしく伸ばし、疲労回復を促します。
7. 負荷は段階的に上げ、「少し余裕があるレベル」で止める
トレーニングの強度を徐々に高めて行くことは大切ですが、ヘルニア患者さんの場合は慎重に。
最初は自重や低〜中負荷から始め、今日はまだ余裕がある程度で終了するのが安全です。
腰椎椎間板ヘルニアの再発を防ぐための日常生活の工夫
ヘルニアの症状が改善しても、再発のリスクは残ります。日常生活での姿勢や習慣を見直し、適切な予防策を講じることが重要です。
筋トレを習慣化する重要性
適切な筋トレを習慣化することは、ヘルニアの再発予防に非常に効果的です。腰を支える筋肉を継続的に鍛えることで、椎間板への負担を軽減し、再発リスクを低減できます。
おすすめは、週に2〜3回、20〜30分程度の体幹トレーニングです。毎日行う必要はなく、筋肉に適切な休息を与えながら継続することが重要です。
「今日は忙しいから」と筋トレを完全にサボるのではなく、短時間でも行える簡単なメニューを用意しておくと良いでしょう。例えば、ドローインなら寝る前の5分でも十分に効果が期待できます。
柔軟性を高めるストレッチの効果
筋肉の柔軟性が低下すると、腰への負担が増え、ヘルニアの再発リスクが高まります。日常的にストレッチを取り入れ、筋肉を柔らかく保つことが重要です。
特に効果的なのは、ハムストリング(太もも裏)のストレッチです。この筋肉が硬いと、骨盤が後傾し、腰椎への負担が増加します。また、股関節周りの筋肉をストレッチすることで、腰への負担を分散させる効果も期待できます。
ストレッチは無理に行うと逆効果になるため、痛みを感じない範囲でゆっくりと行いましょう。呼吸を止めずに、リラックスした状態で20〜30秒キープするのが効果的です。
まとめ:腰椎椎間板ヘルニア患者の筋トレは無理のない範囲で継続を
ヘルニア患者さんにとって、適切な筋トレは症状の改善と再発予防に非常に効果的です。本記事でご紹介した7つの注意点を守りながら、自分のペースで取り組んでいただきたいと思います。
特に重要なのは、以下のポイントです:
- 体幹と下半身の筋力強化を中心に行う
- 正しいフォームを重視し、無理な負荷は避ける
- 痛みを感じたらすぐに中止する
- 日常生活での姿勢や動作にも注意を払う
- 継続することで効果を実感できる
筋トレを始める際は、痛みがなくなり日常生活に支障がない状態になってからが理想的です。不安がある場合は、医師やリハビリ専門家に相談しながら進めることをお勧めします。
ヘルニアとの付き合い方は人それぞれです。焦らずに、自分の体と対話しながら、無理のない範囲で筋トレを生活に取り入れてみてください。正しい知識と方法で取り組めば、きっと症状の改善を実感できるはずです。
腰の痛みや体の不調でお困りの方はいいだメンタルペインクリニックまでお気軽にご相談ください。
著者情報
いいだメンタルペインクリニック
ペインクリニック内科・麻酔科
理事長 飯田 高史
- 医学博士
- 麻酔科標榜医
- 日本専門医機構認定麻酔科専門医
- 日本麻酔科学会麻酔科認定医
- 日本ペインクリニック学会専門医