椎間板ヘルニア手術後のしびれはいつまで続く?
2025.10.27ペインクリニック内科・麻酔科

椎間板手術後の痛みやしびれはいつまで続く?
椎間板ヘルニア手術を受けた後、「しびれはいつ取れるのだろう」と不安を抱える患者さんは少なくありません。手術は成功したはずなのに、足や腰のしびれが残り、日常生活に支障をきたしている方もいらっしゃるでしょう。
実は、椎間板ヘルニアの手術後にしびれが残るのには医学的な理由があります。神経の回復には時間がかかるため、手術直後から全ての症状が消失するわけではないのです。
この記事では、椎間板ヘルニア手術後に患者さんに知っておいてほしいことについてお伝えします。
椎間板ヘルニア手術後のしびれが続く理由
椎間板ヘルニア手術後にしびれが続く理由は主に神経の回復過程にあります。手術によってヘルニアによる神経の圧迫は解除されますが、一度ダメージを受けた神経の回復には時間がかかるのです。
神経が治癒するのに時間がかかるため、一時的な症状が残る場合があります。身体の状態によっては数日から数週間、時には数ヶ月かかることもあるのです。
神経損傷の回復メカニズム
神経は人体の中でも特に繊細な組織です。一度損傷を受けると、その回復には独特のプロセスが必要になります。
神経が圧迫されていた期間が長いほど、回復にも時間がかかる傾向があります。長期間の圧迫によって神経線維自体に変性が起きていると、圧迫が解除された後も症状が残りやすくなるのです。
特に重症化して一度神経に傷が残ってしまうと、完全に回復することは難しい場合もあります。これが、手術後もしびれが残る主な理由の一つです。
手術後のしびれが続く他の原因
しびれが続く原因は神経の回復過程だけではありません。手術後のしびれが続く原因としては、以下のようなケースも考えられます:
- 誤った診断:症状の原因が椎間板ヘルニア以外にもある場合
- 複合的な問題:椎間板ヘルニアと他の疾患が併存している場合
- 椎間孔狭窄症と脊柱管狭窄症の併発:両方の症状がある場合は片方の治療だけでは不十分なことも
- 二次的な椎間板ヘルニア:手術後に別の部位でヘルニアが発生する場合
- 手術中の予期せぬ神経損傷:稀なケースですが可能性としてありえます
- 瘢痕組織(はんこんそしき)の形成:傷の治癒過程で形成される組織が神経の可動性を制限する場合
これらの原因によって、手術が成功したにもかかわらず、しびれなどの症状が残ることがあるのです。
椎間板ヘルニア手術後のしびれ回復期間
椎間板ヘルニア手術後のしびれ回復期間は個人差が大きく、症状の程度や手術の種類によっても異なります。一般的な回復の目安をお伝えします。
多くの場合、手術後のしびれは時間の経過とともに徐々に改善していきます。ただし、その期間には個人差があり、完全に消失するまでの時間は患者さんによって異なります。
回復期間の目安
手術後の神経症状の回復期間は、おおよそ以下のような段階を経ます:
- 手術直後〜1ヶ月:痛みやしびれが続くことが一般的です。神経の修復に時間がかかるため、この期間は症状が残りやすいでしょう。
- 1〜3ヶ月:多くの患者さんでしびれが徐々に軽減していく時期です。日常生活への支障も少しずつ減っていきます。
- 3ヶ月以降:3ヶ月経っても症状が残っている場合は、自然に改善する可能性は低くなります。この時点で残っているしびれは、長期化する可能性があります。
しびれの種類による回復期間の違い
しびれの種類によっても回復期間は異なります。例えば、軽度のチクチクするような感覚であれば比較的早く回復する傾向がありますが、強い痺れや感覚の完全な消失などの重度の症状は回復に時間がかかることが多いです。
また、しびれの範囲も回復期間に影響します。広範囲にわたるしびれよりも、限局的なしびれの方が回復が早い傾向にあります。
どのような場合でも、焦らずに医師の指示に従い、適切なリハビリテーションなどを続けることが大切です。
術後のしびれを和らげる効果的な対処法
椎間板ヘルニア手術後のしびれを和らげるためには、適切な対処法を知ることが重要です。ここでは、医学的根拠に基づいた効果的な対処法をご紹介します。
しびれの回復を促進するためには、日常生活での注意点と積極的なリハビリテーションの両方が必要です。焦らず、段階的に取り組むことがポイントです。
日常生活での注意点
術後の回復を早めるためには、日常生活での注意が欠かせません。以下のポイントを心がけましょう:
- 腰に負担のかかる動作を避ける:重いものを持ち上げる、長時間同じ姿勢でいるなどの動作は避けましょう。
- 適度な休息をとる:無理をせず、体に疲労を感じたら休息を取ることが大切です。
- 正しい姿勢を保つ:座る時も立つ時も、背筋を伸ばし、腰に負担のかからない姿勢を心がけましょう。
- 温めることで血行を促進する:患部を温めることで、血行が良くなり、しびれの緩和につながることがあります。
- 処方薬は指示通りに服用する:医師から処方された薬は、指示通りに服用することが重要です。
日常生活の中で、これらの点に注意することで、しびれの緩和と回復の促進につながります。
関連記事:椎間板ヘルニアでやってはいけない7つの行動と対処法
効果的なリハビリテーション
リハビリテーションは、手術後1ヶ月ほどから開始するのが一般的です。適切なリハビリによって、神経の回復を促進し、筋力を維持・向上させることができます。
椎間板ヘルニア手術後におけるリハビリの目的は、腰回りの筋肉を強化して再発を防ぎ、日常生活への円滑な復帰を促すことです。
効果的なリハビリとしては、以下のような運動が挙げられます:
- お腹を鍛える運動:腹式呼吸や軽い腹筋運動など
- お尻を鍛える運動:ブリッジ運動や片足上げ運動など
- ストレッチング:背中や腰のストレッチで柔軟性を高める
- 有酸素運動:ウォーキングなどの軽い有酸素運動
これらの運動を行う際は、痛みを感じたら無理をせず、医師やリハビリ専門家の指導のもとで行うことが重要です。
動作中に強い痛みがあるときは、回数や力の入れ方を調整しましょう。無理なリハビリは逆効果になることもあります。
まとめ:椎間板ヘルニア手術後のしびれと上手に付き合うために
椎間板ヘルニア手術後のしびれは、神経の回復過程として一定期間続くことがあります。多くの場合、時間の経過とともに徐々に改善していきますが、完全に消失するまでの期間には個人差があります。
しびれの回復を促進するためには、日常生活での注意点を守り、適切なリハビリテーションに取り組むことが重要です。また、しびれが長引く場合には、専門医に再度相談しましょう。
椎間板ヘルニア手術後のしびれでお悩みの方は、ぜひ一度いいだメンタルペインインクリニックにご相談ください。
著者情報
いいだメンタルペインクリニック
ペインクリニック内科・麻酔科
理事長 飯田 高史
- 医学博士
- 麻酔科標榜医
- 日本専門医機構認定麻酔科専門医
- 日本麻酔科学会麻酔科認定医
- 日本ペインクリニック学会専門医