脊髄刺激療法(SCS)とは?慢性難治性疼痛への効果・適応・流れを旭川の専門医が解説
2026.06.03ペインクリニック内科・麻酔科

薬を飲み続けても痛みが取れない。神経ブロックを繰り返しても効果が長続きしない。脊椎の手術を受けたのに痛みが再発してしまった。そんな慢性難治性疼痛に長年苦しんでいる方に、ぜひ知っていただきたい治療法があります。それが脊髄刺激療法(Spinal Cord Stimulation:SCS)です。
SCSは海外では40年以上前から実施されており、世界で35万人以上、日本国内では6000人以上、国内でも1992年から保険適用となっている歴史と実績のある治療法です。「もう打つ手がない」と感じている方にこそ、一度検討していただきたい選択肢です。
脊髄刺激療法(SCS)とは
定義と位置づけ
脊髄刺激療法とは、脊髄の外側を覆う硬膜外腔に細いリード(刺激電極)を留置し、感じない程度の微弱な電流を脊髄に流すことで、神経障害による痛みや血流障害に伴う痛みを緩和する手術療法です。
痛みを完全になくす治療ではなく、痛みを概ね半減させることでQOLの向上を目指す治療です。慢性難治性疼痛に対する治療は一般的に「薬物療法→神経ブロック→SCS」という段階を経て検討されます。外科的な根治手術とは異なり、必要があれば装置を取り除いて元の状態に戻せる可逆的な治療であることも大きな特徴です。
脊髄刺激療法の仕組み
痛みを抑制する2つのメカニズム
痛み刺激は脊髄後索路という経路を通って脳に伝わることで「痛い」と認識されます。この経路に微弱な電気刺激を与えると、GABA(γ-アミノ酪酸)やアセチルコリンなど痛みの伝達を抑制する神経伝達物質が増加・活性化し、脳への痛み信号が抑制されて痛みが和らぎます。
また、電気刺激によって神経末端では血管拡張物質(カルシトニン遺伝子関連ペプチド・一酸化窒素など)が増加します。交感神経系が抑制されて血管が拡張し、患部周囲の血流が改善されることで痛みが緩和されます。末梢血管障害による痛みへの効果はこのメカニズムによるものです。
使用する機器
- リード(刺激電極):直径約1.3mmの細い電極。硬膜外腔に1〜2本留置します。
- 刺激装置(ジェネレータ):ペースメーカーに似た小型機器。お尻の上の脂肪層に埋め込みます。充電式と電池交換式(平均2〜3年)の2種類から選択できます。
- 患者用コントローラー:ジェネレータの上にあてることで患者さん自身が刺激の強さを調整できます。
対象疾患・適応
SCSは以下のような慢性難治性疼痛に効果があるとされています。
脊椎・脊髄疾患による腰下肢痛:腰部脊柱管狭窄症・脊椎手術後に再発した痛み(術後疼痛症候群)・腰椎多数回手術後の残存痛・癒着性くも膜炎など。特に「手術を受けたのに痛みが取れない」という方に有効なケースが多くみられます。
脊椎・脊髄疾患による頚部・肩・上肢の痛み:頚部脊柱管狭窄症・頚部手術後に再発した痛みなど。また、近年では脊椎手術よりも低侵襲であることから、多椎間手術の代替として施行される報告が増加しています。
末梢血管障害(PAD)による痛み:閉塞性動脈硬化症(ASO)・バージャー病・レイノー病・レイノー症候群など。SCSの血管拡張効果が有効とされています。
その他の慢性難治性疼痛:反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)・カウザルギー・断端痛・幻肢痛・帯状疱疹後神経痛・脳卒中後の肩手症候群・多発性硬化症など。
治療の効果
SCSは痛みを完全になくす治療ではなく、痛みを半減させることを目標としています。それだけでも睡眠の質の向上・外出機会の増加・内服薬の減量・精神的な余裕の回復など、生活の質に大きな変化が期待できます。SCSによって痛みがコントロールできると鎮痛薬を減量できるケースがあり、薬の副作用リスク軽減にもつながります。
治療の流れ
STEP1|外来診察・適応の確認
これまでの治療歴・画像検査・痛みの性状をもとに、SCSが適応となるかを評価します。疑問点はこの段階で遠慮なくご相談ください。
STEP2|手術(連携病院にて実施)
手術は全身麻酔や鎮静下ででうつ伏せの体勢で行います。背中の中央に2〜3cmの切開を加え、細いリードを1〜2本、脊髄外側の硬膜外腔に留置します。続いてお尻の上に5cm程度の切開を加え、ジェネレータ(ペースメーカーに似た刺激装置)を脂肪層の中に設置します。リードの端はジェネレータに接続されます。従来はまずリードの挿入のみで効果を判定するトライアルを行いジェネレーター挿入をすることが一般的でした。昨今は入院期間の短縮や機器の性能の進歩に伴う有効性の向上から一期的に植え込むことが増えています。
)。STEP3|入院・機器操作の習得(1週間程度)
術後は3-5日程度程度入院していただき、刺激装置の操作方法に慣れていただきます。お尻に埋め込んだジェネレータの上に患者用コントローラーをあてることで、患者さん自身が刺激の強さや設定を調整できます。ジェネレータは充電式と非充電式から選択できます。
STEP4|退院後の定期外来・刺激調整
退院後は定期的な外来で刺激設定の確認・調整を行います。術前の診察から術後のフォローアップまで当院が一貫して対応します(手術本体は連携病院で実施)。
注意事項・日常生活への影響
併用できない機器・治療:歯科治療の一つであるジアテルミー(高周波電磁電流療法)は絶対禁忌です。MRI検査は可能な機器を使用しておりますが1.5Tまでとなります。また撮影施設に制限が出る場合があります。
注意が必要な治療:放射線治療・体外式除細動器・砕石術・電気焼灼(単極焼灼器は使用不可)・高出力超音波検査などは担当医師に相談のうえ対応を指示してもらいます。
日常生活:通常の生活に大きな支障はほとんどありません。ただし重い荷物の持ち上げや激しい運動でリードがずれると再手術が必要になることがあります。特に術後8週間ほどは重い荷物の持ち上げには注意してください。強い磁気を発生する家電・防犯ゲート・金属探知機・電気自動車の充電器には影響を受ける可能性があります。空港などでは植込み患者手帳を提示し、手によるセキュリティチェックを要求してください。
よくある質問(FAQ)
保険が使えますか?
SCSは1992年より保険適用となっています。高額療養費制度も利用できます。詳細な費用は診察時にご説明します。
手術は痛いですか?
全身麻酔や鎮静下で行うため手術中の痛みはあまり感じません。術後の傷の痛みは一般的な手術と同程度です。詳細は診察時にご確認ください。
まず効果を確認してから手術できますか?
希望する場合、まずリードのみを挿入して刺激効果を確認することが可能です。詳細は診察時に担当医師にご相談ください。
電池の寿命は?
充電式は定期充電で約10年使用できます。電池交換式は使用頻度によりますが平均2〜3年程度で、消耗時は交換手術が必要です。
植込み後に運動はできますか?
本植込み後6〜8週間は過度な運動を控えていただきます。それ以降は基本的に運動制限はありません。
まとめ|慢性難治性疼痛でお悩みなら旭川のいいだメンタルペインクリニックへ
脊髄刺激療法(SCS)は、薬物療法、神経ブロックや他のインターベンション治療では改善しない慢性難治性疼痛に対して、脊髄への微弱な電気刺激で痛みを緩和する確立された手術療法です。全身麻酔や鎮静下での低侵襲な処置であり、希望に応じてまずリードのみを挿入して効果を確認することも可能です。
脊椎手術後に再発した痛み・CRPS・末梢血管障害・帯状疱疹後神経痛・幻肢痛など、長年苦しんできた難治性の痛みを抱えている方は、ぜひ旭川のいいだメンタルペインクリニックへご相談ください。当院ペインクリニック専門医が治療の適応から術後フォローまで一貫して対応します。