神経障害性疼痛の原因とは?ビリビリ・ジンジンした痛みの正体と治療法を旭川の専門医が解説
2026.05.08ペインクリニック内科・麻酔科

ビリビリ、ジンジン、チクチク。そんな言葉でしか表現できない痛みが長期間続いている。痛み止めを飲んでも改善しない。「これは本物の痛みなのか」と不安になっている方はいませんか。
その痛みは、神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう) かもしれません。神経そのものが障害されることで起きる慢性的な痛みであり、通常の痛み止めが効きにくい・痛みが長引くという特性があります。
この記事では、当院ペインクリニック専門医・精神科の立場から、神経障害性疼痛の原因・症状・治療法をわかりやすく解説します。
神経障害性疼痛とは:「普通の痛み」とは何が違うのか
定義と侵害受容性疼痛との違い
神経障害性疼痛とは、体性感覚神経系の損傷や疾患によって引き起こされる痛みです。痛みを伝える神経そのものがダメージを受けるか異常な興奮状態に陥ることで、組織への傷がなくても痛みが生じ続けます。
通常の痛み(侵害受容性疼痛)は原因が治れば消えますが、神経障害性疼痛は原因疾患が改善した後も神経の異常が残存し、慢性的に続くことがあります。NSAIDs系の痛み止めはほとんど効果がなく、神経の興奮を抑える専門的な薬剤や神経ブロックが必要です。「痛み止めが全然効かない」という方は、神経障害性疼痛が背景にある可能性があります。
特徴的な症状
- 安静時痛:じっとしていてもビリビリ・ジンジン・灼けるような感覚が続く
- アロディニア(異痛症):軽く触れる・風が当たるだけで強い痛みが生じる
- 痛覚過敏:わずかな刺激でも過剰に強い痛みを感じる
- その他:感覚の鈍さ・しびれ・手足の冷感・脱力感
「言葉では表現しにくい痛み」として一人で抱えてきた方も多いですが、これらは医学的にきちんと評価・治療できる状態です。
神経障害性疼痛の原因:どこで神経が障害されるか
障害部位によって末梢神経性・脊髄性・中枢性に分類されます。
末梢神経の障害
帯状疱疹後神経痛・糖尿病性末梢神経障害・外傷や手術後の神経損傷・化学療法誘発性末梢神経障害などが代表例です。手足の末端にしびれ・灼熱感・ビリビリした痛みが出やすく、左右対称性に現れることもあります。
脊髄レベルの障害
椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・外傷性脊髄損傷などが原因となります。坐骨神経痛もこのカテゴリーに含まれます。圧迫されている神経に一致する部位に痛み・しびれが走り、姿勢や動作によって変化するのが特徴です。
中枢(脳)レベルの障害
脳卒中後疼痛・多発性硬化症・脊髄損傷後疼痛などが代表例です。突然現れた片側の感覚異常は脳血管障害が原因のことがあるため、早期に神経内科・脳神経外科での評価が必要です。
主な原因疾患
帯状疱疹後神経痛は、皮疹が治癒した後も強い神経痛が残存する状態です。アロディニア(衣服が触れるだけで激痛)が特徴で、特に高齢者で生じやすいことが知られています。帯状疱疹の急性期から早期にペインクリニックで治療を開始することで、後神経痛への移行リスクを軽減できる可能性があります。
糖尿病性神経障害は、高血糖の持続で末梢神経が障害される疾患です。夜間に症状が悪化しやすく、睡眠の質を著しく低下させます。血糖コントロールと並行した専門的な治療が必要です。
坐骨神経痛・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症では、圧迫が長期化すると神経自体がダメージを受け、神経障害性疼痛の成分が強くなります。通常の鎮痛薬だけでは不十分となり、神経障害性疼痛治療薬や神経ブロックが有効です。
三叉神経痛は、顔面に電撃様の激しい痛みが瞬間的に走る疾患です。食事・会話・歯磨きなどがトリガーになります。上顎神経ブロックや下顎神経ブロック、ガッセル神経節ブロックといった三叉神経ブロックが有効な治療のひとつです。
神経障害性疼痛が長引く理由:痛みの悪循環
痛みが長期間続くと中枢感作という状態に移行します。本来「痛みを抑える経路」が機能しなくなり、軽い刺激でも強い痛みとして感じ続けるようになります。さらに、不安・睡眠障害・抑うつ状態が重なることで悪循環が形成され、治療に時間がかかるようになります。
「脳にしみ込んだ痛み」という表現は痛みの実在を否定するものではありません。痛みの処理系自体が変化していることを説明するための言い方であり、痛みは紛れもなく本物です。1ヵ月以上続く特徴的な痛みがある場合は、早めに専門医への受診をお勧めします。
神経障害性疼痛の治療法
治療の基本的な考え方
神経障害性疼痛の治療目標は、痛みを完全に消すことではなくADL(日常生活動作)とQOL(生活の質)の改善です。段階的な薬物療法・神経ブロック・生活習慣の調整を組み合わせ、一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立てます。
薬物療法①|神経障害性疼痛治療薬
プレガバリン(リリカ)・タリージェ(ミロガバリン)・ガバペンチンなどのカルシウムチャネルα2δリガンドは、過剰に興奮した神経への信号伝達を抑制し、ビリビリ・ジンジンした痛みを軽減します。保険診療で処方できます。眠気・ふらつき・体重増加などの副作用があるため、少量から開始して徐々に調整します。
薬物療法②|抗うつ薬
三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)やSNRI(デュロキセチンなど)は、痛みを抑制する神経伝達経路(下行性疼痛抑制系)を賦活することで神経障害性疼痛を軽減します。精神疾患の治療として処方しているわけではなく、疼痛治療の標準的な薬物療法のひとつです。主な副作用として眠気・口渇・便秘・ふらつきがあります。
神経ブロック療法
痛みの原因となっている神経やその周囲に局所麻酔薬を注射し、異常に興奮している神経をリセットして痛みの悪循環を断ちます。帯状疱疹後神経痛には硬膜外ブロック・神経根ブロック・交感神経痛ブロック、三叉神経痛には三叉神経ブロック、坐骨神経痛・椎間板ヘルニアには硬膜外ブロック・神経根ブロックを選択します。当院では超音波(エコー)・レントゲン透視(画像ガイド下)を使用し、安全性と精度の高い処置を実施しています。保険診療の対象です。
スーパーライザー(近赤外線治療)との組み合わせ
注射が苦手な方や、神経ブロックの補完として活用できます。星状神経節への近赤外線照射で交感神経の過剰活動を抑制し、血流改善と自律神経バランスの調整を図ります。帯状疱疹後神経痛・灼熱痛や筋筋膜性疼痛などへの補助的な有効性が期待されます。
ペインクリニック×精神科で神経障害性疼痛を診る意義
神経障害性疼痛が長期化すると不眠・不安・抑うつ状態が合併しやすくなります。これらは中枢感作をさらに進行させる要因であり、積極的なアプローチが必要です。当院はペインクリニックと精神科を標榜しており、神経ブロック療法・薬物療法による身体へのアプローチと、精神科的アプローチによるこころへのケアを同時に提供できます。「痛みで眠れない・気分が落ち込む」という方も、まとめてご相談ください。
よくある質問(FAQ)
神経障害性疼痛は完治しますか?
完治させる治療法は現時点では確立されていませんが、薬物療法・神経ブロックで痛みを軽減し日常生活への影響を大幅に改善できるケースが多くあります。早期治療開始が改善の鍵です。
何科を受診すればいいですか?
ペインクリニック・神経内科・脳神経外科・整形外科などが対応しています。神経ブロックや薬物療法の調整を希望する場合はペインクリニックへの受診が適しています。
抗うつ薬を処方されましたが精神疾患ではないですか?
神経障害性疼痛に対する抗うつ薬の処方は、痛みを抑制する神経伝達系への作用を目的とした治療です。ペインクリニックにおける標準的な薬物療法のひとつですので、ご安心ください。
神経ブロックは何回必要ですか?
疾患の種類・重症度・経過によって異なります。効果を確認しながら1回ずつ方針を相談しますので、まずは一度受診してみてください。
しびれだけで痛みがない場合も神経障害性疼痛ですか?
はい、しびれ・感覚の鈍さ・脱力感のみで痛みを伴わないケースもあります。しびれが続いている・強くなっている場合は受診をお勧めします。
まとめ|神経障害性疼痛でお悩みなら旭川のいいだメンタルペインクリニックへ
神経障害性疼痛は、神経そのものの障害・異常興奮によって生じる慢性的な痛みであり、通常の痛み止めが効きにくく長引きやすい特性があります。帯状疱疹後神経痛・糖尿病性神経障害・坐骨神経痛・三叉神経痛・脳卒中後疼痛など、多様な疾患が原因となります。
神経障害性疼痛治療薬・抗うつ薬などの薬物療法と神経ブロック療法を組み合わせ、痛みの悪循環を断ちADL・QOLの改善を目指します。当院ではペインクリニック専門医による画像ガイド下神経ブロックと精神科的サポートを同時に提供し、身体とこころの両面から向き合います。
旭川でビリビリ・ジンジンした痛みやしびれが続いてお悩みの方は、まずお気軽にいいだメンタルペインクリニックへご相談ください。
著者情報
いいだメンタルペインクリニック
ペインクリニック内科・麻酔科
理事長 飯田 高史
- 医学博士
- 麻酔科標榜医
- 日本専門医機構認定麻酔科専門医
- 日本麻酔科学会麻酔科認定医
- 日本ペインクリニック学会専門医