寝ても疲れが取れない原因は睡眠時無呼吸かもしれません|旭川の精神科医が解説
2026.03.10精神科・心療内科

「ちゃんと寝たのに疲れが取れない」は異常なサインかもしれません
「昨夜は7〜8時間寝たはずなのに、朝から体が重い」「休日にたっぷり寝ても倦怠感が抜けない」そんな経験が続いていませんか。
一時的な疲れであれば、休息をとれば自然に回復するものです。しかし寝ても疲れが取れない状態が2週間以上続いているなら、それは単なる睡眠不足や働きすぎではなく、体の中で見えないトラブルが起きているサインである可能性があります。
原因として多く見落とされているのが「睡眠時無呼吸」です。睡眠中に気道がふさがり、呼吸が繰り返し止まるこの状態は、本人にはほとんど自覚がなく、家族に指摘されるまで気づかないケースが少なくありません。
この記事では、日本精神神経学会専門医・指導医、日本睡眠学会総合専門医の立場から、寝ても疲れが取れない原因を整理し、なかでも見過ごされがちな睡眠時無呼吸との関係、そしてCPAP療法という有効な治療の選択肢についてご説明します。
寝ても疲れが取れない状態が続くとき、まず考えること
睡眠時間より「睡眠の質」が問題のケース
睡眠には、ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルがあります。深いノンレム睡眠の時間帯に成長ホルモンが分泌され、脳や身体の疲労回復が進みます。たとえ8時間眠っていても、この深い睡眠が十分に取れていなければ、翌朝には疲れが残ったままになります。
睡眠の質が下がる原因は生活習慣によるものもありますが、見落とされがちなのが睡眠中の呼吸障害です。本人は「寝ている」つもりでも、脳は何度も覚醒しかけており、深い睡眠に入れていない状態が続いています。
朝の倦怠感・日中の眠気・集中力の低下が重なったら要注意
次のような症状が複数重なっている場合は、睡眠の質に関係した問題が起きている可能性があります。
- 朝起きたときから体がだるい、頭が重い
- 十分に寝たはずなのに日中に強い眠気がある
- 集中力が続かず、ミスが増えた
- 夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)
- 朝起きたときに頭痛がある
- 家族から「いびきがひどい」と言われる
- 寝ている間に呼吸が止まっていると指摘されたことがある
これらは睡眠時無呼吸の代表的なサインです。「いびきがうるさいだけ」と軽く考えている方も多いですが、呼吸の乱れが全身の疲労回復を妨げているケースは非常に多く見られます。
寝ても疲れが取れない原因一覧:生活習慣から病気まで
寝ても疲れが取れない背景にはさまざまな原因が考えられます。自己判断で「疲れているだけ」と決めつけず、原因を丁寧に確認することが大切です。
ストレス・自律神経の乱れ
慢性的なストレスが続くと、本来は夜に優位になるはずの副交感神経(リラックス系)が働きにくくなり、睡眠中も交感神経(緊張系)が優位なままになります。結果として眠りが浅くなり、脳や体の疲労回復が不十分なまま朝を迎えてしまいます。
北海道旭川市のような寒冷地では、季節の変わり目に自律神経が乱れやすい傾向があり、春先や冬季に倦怠感を訴える方が増える時期があります。
貧血・甲状腺機能低下・うつ病
疲れやすさ・倦怠感は、内科的な疾患のサインとして現れることもあります。とくに女性に多い鉄欠乏性貧血や、代謝全体が低下する甲状腺機能低下症は、慢性的な疲労感・だるさを引き起こします。また、うつ病では「睡眠はとれているのに疲れが取れない」「朝が特につらい」という訴えが典型的な症状として現れます。
これらは血液検査や問診・診察で確認できますので、気になる方はまず医療機関への相談をお勧めします。
見過ごされがちな「睡眠時無呼吸」という原因
倦怠感の原因として、もっとも見落とされやすいのが睡眠時無呼吸です。寝ている本人には呼吸が止まっている自覚がなく、「疲れているから眠りが浅いのだろう」と自己解決してしまうことが多いためです。
実際には、睡眠時無呼吸は日本国内で推計300万人以上が罹患しているとされながら、適切な診断・治療を受けていない方が多い状況です。男性・中年以降・肥満傾向のある方に多いとされていますが、女性や若年層にも見られます。
睡眠時無呼吸が「寝ても疲れが取れない」を引き起こすメカニズム
睡眠中の低酸素状態と疲労の関係
睡眠時無呼吸では、眠っている間に上気道(のどの奥)がくり返し閉塞し、呼吸が10秒以上停止します。このとき血液中の酸素濃度が低下し、脳は「危険」と察知して覚醒反応を起こします。この覚醒は本人には記憶されないほど短時間のことが多いですが、一晩に数十〜数百回繰り返されることがあります。
その結果、深い睡眠のステージに入れず、脳も体も十分に休めないまま朝を迎えることになります。これが「寝ても疲れが取れない」「いくら寝ても眠い」という状態の本質的なメカニズムです。
また、慢性的な低酸素・睡眠分断は心臓・血管にも負担をかけ、高血圧・不整脈・心疾患・脳卒中のリスクと関連することも知られています。睡眠時無呼吸を「眠りの問題」だけにとどめず、全身の健康に関わる問題として捉えることが重要です。
いびき・中途覚醒・朝の頭痛は代表的なサイン
睡眠時無呼吸に伴いやすい症状を整理します。
| 症状 | 説明 |
| 大きないびき・途切れるいびき | 気道がふさがり空気が通りにくくなっているサイン |
| 中途覚醒(夜中に目が覚める) | 低酸素による脳の覚醒反応が繰り返される |
| 朝の頭痛・口の乾き | 睡眠中のCO2蓄積・口呼吸による |
| 日中の強い眠気・居眠り | 夜間の睡眠が回復的でないため |
| 集中力・記憶力の低下 | 慢性的な睡眠不足状態と同様の影響が出る |
| 倦怠感・体の重さ | 深い睡眠不足による疲労回復の失敗 |
自覚がないまま進行することも多い
睡眠時無呼吸の難しさは、本人が気づきにくい点にあります。「いびきをかいている自覚がない」「夜中に目が覚めても喉が渇いたせいだと思っていた」という方は少なくありません。一人暮らしの方は特に、周囲から指摘される機会がなく長期間気づかないまま過ごすこともあります。
「寝ても疲れが取れない」という症状が長期間続いている場合、睡眠時無呼吸の可能性を念頭に置いて、専門医に相談することをお勧めします。
睡眠時無呼吸の検査とCPAP療法について
簡易検査から始められる検査の流れ
睡眠時無呼吸の診断は、まず簡易検査(在宅睡眠検査)から始めることができます。検査機器をご自宅にお持ち帰りいただき、普段通りの睡眠中に装着するだけで完了します。入院の必要はなく、日常生活に支障をきたすことなく検査を受けていただけます。
簡易検査で睡眠時無呼吸が疑われる場合には、より精密な終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)を行い、無呼吸の重症度を確認します。
検査の流れの目安は以下のとおりです。
- 初診・問診:症状・生活習慣・睡眠の状態を詳しく伺います
- 簡易検査の貸し出し:ご自宅で1泊の検査
- 検査結果の説明:AHI(無呼吸低呼吸指数)などを確認
- 治療方針の決定:重症度に応じてCPAP療法などを検討
CPAP療法とは何か・保険適用について
CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)とは、鼻に装着したマスクから一定の圧力をかけた空気を送り込み、睡眠中に気道が閉塞しないようにする治療法です。手術や薬ではなく、毎晩の睡眠中に使用する医療機器による治療です。
睡眠時無呼吸の重症度が中等症以上(AHI 20以上)と診断された場合、健康保険が適用されます(3割負担の場合、月額5,000円前後が目安)。治療開始後は月に1回の受診で継続管理を行います。
CPAP療法の主な効果として報告されていること
- 日中の眠気・倦怠感の改善
- 起床時の頭痛・口の乾きの軽減
- 集中力・作業効率の改善
- 血圧の安定化
ただし、効果には個人差があり、マスクのフィット感や圧力設定の調整が必要になることもあります。使用開始後も定期的なフォローアップが重要です。
CPAP開始後に「朝の疲れ」が変わることがある
CPAP療法を開始した方から「朝起きたときの感覚が変わった」「日中に眠くなる頻度が減った」という声をいただくことがあります。睡眠中の呼吸が安定することで深い睡眠が確保されやすくなり、疲労回復の質が改善することが期待されます。
ただし、CPAPを使用しても改善が感じられない場合や、他の原因が重なっている場合もありますので、症状の変化は担当医に丁寧にお伝えください。
朝の倦怠感を改善するためにできること
生活習慣の見直しポイント
睡眠時無呼吸の治療と並行して、日常生活の見直しも重要です。以下のような習慣が、睡眠の質の改善につながることが知られています。
- 就寝・起床時間を一定に保つ:体内時計を整えることが睡眠の質の基本
- 寝る前1〜2時間はスマートフォンを控える:ブルーライトがメラトニン分泌を抑制する
- 就寝前のアルコールは厳禁:深い睡眠を妨げる
- 就寝90分前の入浴(38〜40℃程度):入浴後の深部体温の低下が自然な眠気を促す
- カフェインは15時以降避ける:半減期が長く、夜の睡眠に影響することがある
- 適度な運動習慣を持つ:ただし就寝直前の激しい運動は避ける
また、肥満は睡眠時無呼吸の重要なリスク因子のひとつです。体重管理を行うことで症状が改善するケースもあります。
受診のタイミングと受診先の選び方
次のような症状が続いている場合は、早めに医療機関への相談を検討してください。
- 寝ても疲れが取れない状態が2週間以上続いている
- 日中の眠気が強く、運転中や仕事中にも眠気を感じる
- 家族に「いびきが大きい」「呼吸が止まっている」と言われたことがある
- 朝起きたときに頭痛や口の渇きがある
- 集中力・記憶力の低下が続いている
受診先としては、睡眠専門医が在籍するクリニックを選ぶことで、睡眠時無呼吸の診断から治療・継続管理まで一貫して対応してもらえます。精神科・心療内科を併設しているクリニックでは、ストレスやうつ病など睡眠に影響する心理的な要因も含めて診ることができるため、原因が複合的な場合にも対応しやすいという利点があります。
旭川で「寝ても疲れが取れない」と感じたら:いいだメンタルペインクリニックへ
日本睡眠学会総合専門医による診療
いいだメンタルペインクリニックでは、日本睡眠学会総合専門医の資格を持つ医師が、睡眠に関するお悩みに対応しています。「寝ても疲れが取れない」「日中の眠気が強い」「いびきが気になる」といった症状を、精神科・心療内科の専門知識と睡眠医学の両面から診察します。
睡眠時無呼吸の簡易検査から、結果の説明・CPAP療法の導入・継続管理まで、旭川市内で一貫した対応が可能です。
「病院に行くほどのことかわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。問診の段階で症状を丁寧にお聞きし、必要な検査や対応についてご説明します。
著者情報
いいだメンタルペインクリニック
精神科・心療内科
副院長 安田 麻美
- 精神保健指定医
- 日本精神神経学会専門医・指導医
- 日本睡眠学会総合専門医
- 日本老年精神医学会専門医・指導医
- 日本医師会認定産業医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 北海道女性医師の会 理事