仕事の不安で眠れない夜に〜精神科医が教える対処法と受診の目安

2026.02.17精神科・心療内科

明日の仕事を考えると眠れない・・・それは心のSOSかもしれません

「明日のプレゼンが不安で眠れない」「上司との面談を考えると胸が苦しくなる」・・・こうした経験はありませんか?

仕事に関する不安で眠れない夜が続くと、心身の健康に深刻な影響を及ぼします。単なる一時的なストレスと軽く考えていると、うつ病や不安障害といった精神疾患に発展する可能性もあるのです。

この記事では、精神科専門医の視点から、仕事の不安による不眠の原因と対処法、そして受診を検討すべきタイミングについて詳しく解説します。

なぜ仕事の不安で眠れなくなるのか?

仕事のストレスや不安が睡眠を妨げる主な理由は、自律神経の乱れにあります。

自律神経には、心身を活動的にする「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」の2種類があります。通常、夜になると副交感神経が優位になり、自然と眠りにつけるのですが、強いストレスを受けると交感神経が過剰に働き続けてしまうのです。

脳が覚醒状態のままになり、心拍数が上がり、血圧も上昇します。

「明日の会議はどうしよう」「あの件はうまくいくだろうか」・・・こうした思考が頭の中でぐるぐる回り、ベッドに入っても眠りにつけません。これは「プレ・スリープ・アロウサル」と呼ばれる現象で、眠りにつく前に心や体が興奮状態になってしまう状態です。

完璧主義や心配性の方は特に注意が必要です

完璧主義な傾向がある方や、心配性な方は、一つの問題に対して深く考え込んだり、悪い結果ばかりを想像したりすることがあります。

「もしこうなったらどうしよう」「なぜあの時ああしてしまったのだろう」・・・こうした堂々巡りの思考は、脳を活発に働かせ、リラックスを妨げます。

寝床は本来、心身を休める場所です。しかし考え事をする場所になってしまうと、脳は「ベッド=考える場所」と認識し、眠りに入ることが難しくなってしまいます。

夜になると不安が強まる心理的要因

日中は忙しさで紛れていた不安が、夜になり一人で静かになると強く感じられることがあります。

これには孤独感、情報の遮断、体内時計と感情の変動といった心理的要因が関係しています。特に深夜から明け方にかけては、ネガティブな感情が増幅しやすい時間帯であるという研究もあります。

周囲が静かになることで、心臓の音や呼吸音が気になり始め、さらに不安が増すという悪循環に陥ることもあるのです。

自宅でできる対処法〜今夜から試せる5つの方法

仕事の不安で眠れないとき、自宅でできる対処法があります。

すぐに病院に行くべきか迷っている方も、まずはこれらの方法を試してみてください。

深呼吸でリラックス効果を高める

深呼吸をすることで副交感神経が刺激され、心身のリラックス効果が期待できます。

ストレスを感じている場合、自覚なく浅い呼吸になってしまっている可能性があります。意識的にゆっくりと深い呼吸を繰り返すことで、入眠しやすくなったり、睡眠の質が上がったりすると言われています。

ヨガなどの呼吸法を参考にすることで、より高い効果が得られる場合もあります。

ツボを刺激して副交感神経を活性化

副交感神経に作用するツボを刺激することで心身がリラックスし、快適な睡眠が期待できます。

具体例としては、手のひらの「労宮」や頭頂部の「百会」などが挙げられます。就寝前に優しく押すことで、心身の緊張がほぐれていきます。

お湯につかって体温調節を促す

快適な睡眠には、入眠時に体温が下がる状況を作ることが大切です。

入浴は体温を一時的に上げ、睡眠まで時間をあけることでこの条件が満たされるため、快適な睡眠に繋がります。ただし、入浴後すぐに眠ることは、体温が上がった状態であるため、おすすめできない場合が多いです。

入浴後すぐに眠らないといけない場合は、お風呂の温度をぬるめに設定しておくと良いでしょう。

ストレッチで筋肉の緊張をほぐす

ストレッチにより筋肉が弛緩することで心身がリラックスし、副交感神経が刺激されます。

この刺激によって副交感神経が優位となり、快適な眠りにつけることがあります。また体温が上昇し、入眠がスムーズになることも期待できます。

ストレッチと深呼吸を併せて行うことで、より高いリラックス効果を得られる場合もあります。

匂いや音楽で感覚からアプローチ

匂いや音などの感覚は脳に直接伝わるため、安眠効果のある匂いや音楽には、高いリラックス効果が期待できます。

例えば、歌詞のない音楽や、アロマオイルなどがおすすめです。ただし、強すぎる香りや激しい音楽などは、逆効果となってしまうケースもあるため、注意が必要です。

精神科・心療内科を受診すべき目安とは?

「つらい」と感じた時が受診の基準です。

精神科や心療内科に対して敷居が高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、つらい症状を一人で抱え込み、我慢し続けることは、状況を悪化させてしまう可能性があります。

こんな症状が2週間以上続いたら要注意

以下のような症状が2週間以上続く場合は、専門家への相談を検討しましょう。

  • 悲しい、落ち込む、ゆううつな気分が続く
  • 以前は楽しめていた趣味や活動に興味を持たなくなる
  • 不安が強く、落ち着かない
  • 眠れない、または眠りすぎる
  • 集中力が落ちて頭がはたらかない
  • イライラして怒りっぽくなる
  • 些細なことで涙が出る

これらは、うつ病や不安障害などの精神疾患の可能性を示すサインです。

日常生活や仕事に支障が出ている場合

症状のせいで、日常生活や学業や仕事などの社会生活に影響が出ている場合、症状が耐えられないほどひどい場合、どんどん症状が悪化する場合は、早めに病院を受診しましょう。

「自分は大丈夫」と思っていても、実はこころがすり減っているかもしれません。

身体症状が続く場合も精神科の対象です

精神的な不調は、自律神経の乱れなどを通じて体に様々な症状として現れることが多くあります。

内科などで検査しても異常が見つからない場合、精神的な原因が考えられます。運動性緊張として身震い、動揺、筋肉の緊張、痛み、うずき、落ち着きのなさ、易疲労性が、自律神経機能亢進症状として、息苦しさ、動悸、発汗、口渇、めまい、頻尿、咽喉の異物感などが現れることがあります。

いいだメンタルペインクリニックでの治療アプローチ

当クリニックでは、精神科専門医が丁寧にお話を伺い、病気や症状に応じてご来院いただく皆様の意見を尊重しながら薬物療法や精神療法など必要な治療を行います。

丁寧な問診で不眠の原因を特定

皆様の日常生活状況を丁寧にお聞きします。

心理的な問題、不適切な習慣、望ましくない寝室環境、嗜好品の影響、不眠に関する誤った考え方なども睡眠障害の原因になりやすいです。ご自身ではわからなかった意外な解決策が見つかるかもしれません。

認知行動療法で不安との向き合い方を学ぶ

認知行動療法は、不安障害やうつ病に対してエビデンスのある治療法です。

「もしこうなったらどうしよう」という予期不安や、悪い方向ばかりに考えてしまう思考パターンを、より現実的で建設的なものに変えていくお手伝いをします。

おひとりおひとりの目標に合わせて、専門知識をもつ精神保健福祉士が医療だけでなく、社会資源の利用や各種申請の支援、就労についてのお悩みなど総合的にサポートをいたします。

適切な薬物療法で睡眠の質を改善

必要なときには、睡眠衛生指導の補助として、最低限の睡眠薬を使用します。

薬を希望しない方には、薬物治療なしでの治療も可能です。開始時には作用時間、出現しやすい副作用、内服方法を説明します。

睡眠薬にはGABA受容体作動薬(ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系)、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体作動薬などがあります。

最新の自宅精密検査システムも導入

睡眠中の呼吸障害が疑われる場合、自宅で簡単な検査が可能です。

当院では最新の自宅簡易検査機器を導入しており、指先と腕に電子機器を装着して一晩眠るだけで、睡眠呼吸障害の検査が可能です。より精密な検査を自宅ですることも可能で、最新の自宅精密検査機器(ポータブル睡眠ポリグラフ検査システム)を導入しており、無呼吸と睡眠の評価が、入院せずに自宅で一晩眠るだけで、詳細な検査が可能です。

学校や仕事の都合で睡眠検査入院(通常1週間程度)をすることが難しい方や、より手軽に、しかし詳細に睡眠の検査を行いたい方に最適な検査方法です。

まとめ

仕事の不安で眠れない状態は、自律神経の乱れが主な原因です。

自宅でできる対処法として、深呼吸、ツボ刺激、入浴、ストレッチ、アロマや音楽などがあります。しかし、症状が2週間以上続く場合や日常生活に支障が出ている場合は、精神科・心療内科への受診を検討しましょう。

いいだメンタルペインクリニックでは、女性医師が丁寧に問診し、認知行動療法や適切な薬物療法で改善をサポートします。最新の自宅精密検査システムも導入しており、入院せずに詳細な睡眠検査が可能です。

仕事のことを考えると夜眠れないというかたは、ぜひ一度当院にご相談にいらしてください。

著者情報

いいだメンタルペインクリニック

精神科・心療内科

副院長 安田 麻美

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会専門医・指導医
  • 日本睡眠学会総合専門医
  • 日本老年精神医学会専門医・指導医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 北海道女性医師の会 理事