顔が痛い原因は三叉神経痛かも?症状の特徴と見分け方と治療法を解説
2026.02.15ペインクリニック内科・麻酔科

歯磨きや洗顔といった何気ない動作で、ズキッと痛みが襲ってくる。こうした症状に悩まされている方は少なくありません。
もしかしたら、その痛みの原因は「三叉神経痛」かもしれません。
三叉神経痛は、顔の感覚を司る三叉神経が刺激されることで起こる疾患です。痛みは非常に強く、「この世で感じる最大の痛み」とも表現されるほどです。
三叉神経痛とは?顔の痛みを引き起こすメカニズム
三叉神経痛は、顔面に発作的な激しい痛みが現れる疾患です。
三叉神経は、こめかみの奥にある三叉神経節を起点として3本に枝分かれします。それぞれが「額から上まぶたまで」「下まぶたから上唇の間」「下唇から下」の3つの領域を支配しています。
この神経が何らかの原因で刺激を受けると、支配領域に沿って激しい痛みが生じます。
三叉神経痛の主な原因
最も多い原因は、血管による神経の圧迫です。
脳幹から出てすぐの位置で、動脈が三叉神経を圧迫すると、血管の拍動が神経への強い刺激となり痛みが生じます。加齢により動脈硬化が進むと、血管が長くなり曲がりくねってくることがあり、これが神経を強く圧迫する要因の一つとなります。
血管以外では、類上皮腫や神経鞘腫、髄膜腫といった腫瘍が神経を圧迫しているケースや、ごくまれに血管の奇形(脳動脈奇形)が原因である場合もあります。
三叉神経痛になりやすい年齢と性別
三叉神経痛は、中高年の女性に多く見られます。
特に40〜60代で発症しやすく、男性より女性にやや多い傾向があります。高血圧や動脈硬化のある方は、血管が硬く神経を圧迫しやすいために、発症リスクが高まるとされています。
三叉神経痛の症状の特徴と見分け方
三叉神経痛の痛みには、独特の特徴があります。
典型的な痛みのパターン
痛みは電気が走るように鋭く、数秒から長くても数十秒ほどで治まる短い発作としてあらわれます。
顔の片側に限局し、頬や上あご・下あご・歯ぐきなど、三叉神経の支配領域に沿って生じます。予兆なく突然発生することが多く、思わず動作を止めてしまうほどの強さです。
痛みが何分間も続く場合や、じりじりとした痛みは三叉神経痛ではない可能性が高いです。
日常動作で誘発される痛み
三叉神経痛の大きな特徴は、日常的な動作で痛みが誘発されることです。
洗顔やお化粧、髭剃り、歯磨きといった日常の様々な動作によって、顔の痛みが誘発されます。食べる、噛むといった食事の動作や、冷えた水を飲むことなどによっても痛みが走るケースがあります。
鼻の横など、痛みが誘発されるポイントがあり、その場所を触ると顔面に痛みが走るという場合には、三叉神経痛が疑われます。
痛み発作後に一定時間痛みがおきない「不応期」をともなうこともこの病気の特徴です。また、痛みが季節に伴って変わるという特徴もあります。
他の疾患との見分け方
顔の痛みを引き起こす疾患は、三叉神経痛以外にもいくつか存在します。
帯状疱疹後三叉神経痛
普通の三叉神経痛とよく似ていますが、区別しなければいけない疾患です。帯状疱疹はウイルス感染によって起こる皮膚の疾患で、三叉神経の分布に沿って皮疹が現れます。顔の痛みのみではなく、同じタイミングで顔や頭部に赤い発疹や水ぶくれがあり、それに痛みやかゆみが続くというような場合は、三叉神経痛ではなく帯状疱疹が疑われます。
舌咽神経痛
三叉神経痛と似た痛みが、顔面ではなく喉の奥に生じます。ものを飲み込んだ時に痛みが誘発され、耳の穴の奥や首の前面に痛みがあるように感じるケースもあります。
その他、歯の神経痛、顎関節症、副鼻腔炎、群発頭痛なども三叉神経痛と似た症状を来すことがあります。特に歯の痛みがある場合、区別することが難しく、歯医者を受診しても痛みが治らない場合、三叉神経痛を疑う必要があります。
三叉神経痛の診断方法
三叉神経痛の診断において最も重要なことは、痛みの症状や経過について詳しく聞くということです。
問診の重要性
この疾患では、三叉神経痛の診療の経験が豊富な医師が詳細な問診を行えば、診断の見当をつけることはあまり難しくはありません。
ただし、痛みが典型的でない、症状の訴えがはっきりしないなど、診断が難しいケースももちろんあります。
MRI検査による確定診断
三叉神経痛の診断には、MRIが必要です。
三叉神経の付近に圧迫している血管のループが存在している場合や、もしくは腫瘍が見られる場合、三叉神経痛であると考えられます。これらの神経や血管は非常に細かく、画像を見ただけでは血管によって神経の圧迫が起こっていると言えない場合もありますので、画像診断と問診でお聞きした症状とを組み合わせて診断を確定させる必要があります。
顔痛の治療〜三叉神経ブロック療法
顔の感覚を司る「三叉神経」に局所麻酔薬などを注射し、痛みの伝達を一時的に抑える治療法です。顔面痛、とくに三叉神経痛や神経過敏による顔の痛みに対して行われます。
三叉神経は顔の感覚を3つの枝で担当しています。
痛みの部位に応じて、ブロック部位を選択します。
- 第1枝(眼神経):おでこ・目の周囲
- 第2枝(上顎神経):頬・上顎・上の歯
- 第3枝(下顎神経):下顎・下の歯・顎
軽症例では超音波下にこれらの末梢枝をブロックします。重症例ではレントゲン透視下に上顎神経や下顎神経ブロックを行い、効果を延長させるために高周波熱凝固を行います。ガッセル神経節(神経の中枢部)を対象にすることもあります。
治療の流れ
- 痛みの部位・性質を詳細に評価
- ブロック部位を決定
- 消毒後、細い針で局所麻酔薬を注射
- 高周波熱凝固やパルス高周波法を施行
- 数分〜30分ほど安静
- 効果・副作用を確認して帰宅
三叉神経ブロック療法は、顔面痛に対する有効な保存的治療です。強い痛みを我慢せず、早期に適切な治療を行うことで、痛みの慢性化や生活への影響を防ぐことができます。
三叉神経痛を放置するとどうなるか
三叉神経痛を放置すると、痛みが頻繁に起こるようになります。
会話や食事など日常生活に支障を来すようになります。痛みを恐れて顔を動かさなくなることで表情筋がこわばることもあります。
稀に神経を圧迫している脳の血管や腫瘍が原因のこともあるため、放置せずに適切な検査や治療を受けるようにしましょう。
まとめ
顔に突然走る激しい痛み、それは三叉神経痛のサインかもしれません。
三叉神経痛は、血管による神経の圧迫が主な原因で、中高年の女性に多く見られます。痛みは数秒から数十秒の短時間で、洗顔や歯磨きなどの日常動作で誘発されるのが特徴です。
いいだメンタルペインクリニックでは、ペインクリニック専門医の立場から、神経ブロック療法を中心とした治療を提供しています。顔の痛みでお困りの方は、放置せずに早めにご相談ください。適切な治療により、痛みのない生活を取り戻すことができます。
顔の痛みでお困りの方は、いいだメンタルペインクリニックまでお気軽にご相談ください。
著者情報
いいだメンタルペインクリニック
ペインクリニック内科・麻酔科
理事長 飯田 高史
- 医学博士
- 麻酔科標榜医
- 日本専門医機構認定麻酔科専門医
- 日本麻酔科学会麻酔科認定医
- 日本ペインクリニック学会専門医