手に力が入らない・脱力する。頸椎症の初期症状と原因|注意すべき6つのサイン

2026.02.11ペインクリニック内科・麻酔科

手に力が入らない…それは頸椎症のサインかもしれません

瓶の蓋を開けようとしたとき、ペンを握ろうとしたとき、ふと「あれ、力が入らない」と感じたことはありませんか。

日常生活の何気ない動作で手に力が入らない、脱力する、しびれるといった症状が現れる場合、それは頸椎症の初期症状である可能性があります。

頸椎症は、首の骨(頸椎)の加齢による変性が原因で、神経が圧迫されることによって起こる疾患です。50代以降で多く見られますが、近年ではスマートフォンやパソコンの長時間使用により、20~30代の若い世代でも発症が増えています。

頸椎症の原因…加齢だけではありません

頸椎症の主な原因は加齢ですが、それ以外にもいくつかの要因が症状を悪化させたり、若年層でも発症することがあります。

長時間の不良姿勢

デスクワークやスマートフォンの長時間使用で、うつむいたり前かがみになったりする姿勢は、頭の重さが首に大きくのしかかり、頸椎に負担をかけます。

特に、猫背などの悪い姿勢が続くと、頸椎の自然なカーブが崩れ、変形が進みやすくなります。

首への繰り返し負担

重い物を頻繁に持ち上げる作業や、首に負担のかかるスポーツ(ラグビー、柔道、一部の水泳など)を長年行っていると、頸椎や椎間板にダメージが蓄積し、頸椎症のリスクが高まります。

また、直接の因果関係の証明は難しい場合が多いですが、昔の転倒や交通事故による外傷(むちうちなど)も、一時的に頸椎に強い衝撃を与え、頸椎症の発症につながる可能性があります。

喫煙の影響

喫煙も、血流を悪くして、変性を早める可能性があるとされています。椎間板への栄養供給が低下し、劣化が進みやすくなります。

これらの要因が単一または複合的に作用することで、頸椎症は発症しやすくなります。

頸椎症のタイプ|神経根症と頸髄症の違い

頸椎症は、どの神経が圧迫されているかによって、症状の現れ方が大きく異なります。

主に次の2つのタイプに分けられます。

頸椎症性神経根症

神経の根元(神経根)が圧迫されるタイプです。

特徴

・首から肩、腕、手にかけての痛みやしびれ

・手に力が入りにくい、物をつかみにくい

・症状は片側に出ることが多い

日常生活の動作(瓶の蓋を開ける、ペンを握るなど)で違和感を覚え、

比較的早い段階で気づかれることが多いのが特徴です。

頸椎症性頸髄症

脊髄そのものが圧迫されるタイプで、神経根症よりも重症化しやすいとされています。

特徴

・両手の細かい動作がしづらい(箸・ボタン操作が困難)

・歩行時のふらつき、足のもつれ

・手足のしびれが両側に出る

・排尿・排便障害を伴うこともある

症状が両手・両足など広範囲に及ぶのが特徴で、

進行すると日常生活への影響が大きくなるため、早期診断が重要です。

注意すべき6つの初期症状とサイン

頸椎症の初期症状は、首や肩のこりから始まることが多く、最初は単なる疲労と思われがちです。

しかし、以下のような症状が現れた場合は、頸椎症の可能性を考慮する必要があります。

①首・肩のこりと痛み

首のこり、首の痛み(特に動かした時)、肩のこり、肩甲骨周辺の痛みが現れます。朝起きた時の首の痛みやこわばりも特徴的です。

多くの人が肩甲骨周辺の痛みが手のしびれや痛みよりも先に現れるといわれています。

②腕の痛みとだるさ

腕の痛みやだるさが生じます。神経根が圧迫されることで、首から肩、腕にかけて強い痛みが放散することがあります。

③指先のしびれと感覚の鈍化

指先のしびれや腕の感覚が鈍くなります。どの神経根が圧迫されているかによって、しびれる部位が異なります。

  • C5神経根:上腕外側(三角筋周囲)
  • C6神経根:前腕外側~母指、示指
  • C7神経根:手掌
  • C8神経根:小指

④細かい作業の困難

箸が使いにくい、ボタンがかけにくい、字が書きにくいといった巧緻運動障害が現れます。手先の細かい作業が思うようにできなくなります。

⑤腕の力が入りにくい

腕の力が入りにくくなり、物を落としやすくなります。筋力低下により、日常生活動作に支障をきたします。

⑥特定の姿勢での症状悪化

顔を上に向けた時に痛みやしびれがひどくなる、仰向けで寝られないといった症状があります。首の後屈で神経の圧迫が強まるためです。

これらの症状が複数当てはまる場合は、早めに専門の医療機関を受診することが大切です。

頸椎症の検査・診断方法

頸椎症の診断には、首の骨や神経の状態を詳しく見る画像検査が必要です。

レントゲン検査(X線検査)

骨折の有無の確認、首の骨の並びや変形、骨のとげ(骨棘)がないかを確認します。

また、骨と骨の間の隙間が狭くなっているかどうかを検査します。椎間板の変性により椎間腔が狭小化している場合、頸椎症の可能性が高まります。

MRI検査

磁気を使って体の断面を撮影する検査で、レントゲンでは見えない椎間板(骨と骨の間のクッション)、脊髄、神経根といった柔らかい組織の状態を詳しく確認できます。

神経がどの程度圧迫されているかを評価するのに非常に重要な検査の一つです。脊髄内に高輝度領域が認められる場合、神経根症だけでなく脊髄症の可能性があります。

CT検査

X線を使って体の断面を撮影する検査で、骨の細かい状態や骨棘で神経の通り道が狭くなっているかを詳しく見ることができます。

椎間孔の狭窄や骨棘の詳細な形状を評価するのに有用です。

これらの診察と画像検査の結果を総合的に判断して、頸椎症であるかどうか、そしてどのような状態かを診断します。

ペインクリニックでの専門的な治療

頚椎症による首〜腕にかけての痛みやしびれには、ペインクリニックでの神経ブロック療法や薬物療法が有効です。

神経根ブロック

痛みの原因となっている神経の根元に直接麻酔薬などを注入し、痛みやしびれを和らげます。

神経根の圧迫を直接的に解除することで、症状の改善が期待できます。

腕神経叢ブロック

首や肩、腕につながる神経の束に麻酔薬を注入し、血流改善と痛みの軽減を図ります。

神経根よりも末梢で、神経が圧迫されている場合に適応となります。

星状神経節ブロック

交感神経の緊張を抑え、血行を良くして痛みの悪循環を断ち切ります。

筋肉が硬くなっているような慢性的な痛みや自律神経症状を伴う場合に効果的です。

その他の治療法

トリガーポイント注射や、スーパーライザーによる近赤外線治療なども行われます。トリガーポイントは筋膜をリリースする効果もあります。

緊急性の高い症状…脳疾患の可能性も

脳疾患(脳梗塞など)によって、体の片側に麻痺を伴う症状が急に出現する場合があります。緊急性が高いため、すぐに病院を受診してください。

頸椎症性神経根症は通常、左右どちらか片側に症状が生じるのが特徴ですが、脳疾患でも片側に症状が現れることがあります。

緊急受診が必要な症状

  • 突然の激しい頭痛
  • 意識障害やろれつが回らない
  • 顔面の麻痺
  • 片側の手足の麻痺や脱力
  • 視野障害や複視

これらの症状が現れた場合は、脳梗塞や脳出血などの重篤な疾患の可能性があるため、直ちに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。

まずは専門の医療機関で精密検査を受け、適切な治療方針を決めることが重要です。

まとめ

手に力が入らない、脱力する、しびれるといった症状は、頸椎症の初期サインかもしれません。

頸椎症は加齢による椎間板の変性が主な原因ですが、長時間の不良姿勢、首への繰り返し負担、喫煙なども発症リスクを高めます。

注意すべき6つのサインとして、首・肩のこりと痛み、腕の痛みとだるさ、指先のしびれと感覚の鈍化、細かい作業の困難、腕の力が入りにくい、特定の姿勢での症状悪化が挙げられます。

診断にはレントゲン、MRI、CT検査が用いられ、治療は薬物療法、リハビリテーション、必要に応じて手術が選択されます。ペインクリニックでの神経ブロック療法も有効な治療法です。

症状を放置して頸髄症になると、腕や手のしびれの悪化、足への症状の出現、歩行不安定、排尿障害などに進行する可能性があります。

早期発見・早期治療が症状の進行を防ぎ、生活の質を維持する鍵となります。気になる症状がある方は、ためらわずに専門医にご相談ください。

いいだメンタルペインクリニックでは、頸椎症をはじめとする痛みの治療に専門的に取り組んでいます。お気軽にお問い合わせください。

引用:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16924193/

著者情報

いいだメンタルペインクリニック

ペインクリニック内科・麻酔科

理事長 飯田 高史

  • 医学博士
  • 麻酔科標榜医
  • 日本専門医機構認定麻酔科専門医
  • 日本麻酔科学会麻酔科認定医
  • 日本ペインクリニック学会専門医