不眠症と睡眠障害の違いとは?専門医が教える正しい理解と対処法

2025.12.07精神科・心療内科

不眠症と睡眠障害の違いとは?正しい理解と対処法

「眠れない」という症状を引き起こす睡眠の問題には、不眠症以外にもさまざまな種類があります。睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群、概日リズム睡眠・覚醒障害など。これらは「睡眠障害」という大きなカテゴリーに含まれますが、それぞれ原因も治療法も異なるのです。

この記事では不眠症と睡眠障害の定義と違い、不眠症と間違えやすい代表的な睡眠障害、それぞれの症状の特徴と見分け方、適切な対処法と受診のタイミング、日常生活でできる改善策について精神科医の観点から詳しく解説していきます。

不眠症とは何か〜定義と基本的な理解

不眠症とは、眠る環境が整っているのに「眠れない状態」が週3回以上、3か月以上続くことで、日中の活動に支障をきたす病気です。

夜眠れないだけでなく、日中の眠気・倦怠感・集中力低下・イライラ・頭痛などが現れるのが特徴です。

タイプ特徴備考
入眠障害寝つくまで30分以上かかる。ストレス・不安が原因となることが多く、若年層に多いタイプ。
中途覚醒夜中に何度も目が覚める。高齢者に多く、睡眠が浅くなることが関係。
早朝覚醒予定より2時間以上早く目が覚める。うつ病や加齢との関連がしばしばみられる。

不眠症の主な原因

不眠症を引き起こす原因は多岐にわたります。

  • 仕事や人間関係などの心理的ストレス
  • 不規則な生活リズムや睡眠習慣の乱れ
  • うつ病や適応障害などの精神疾患
  • カフェインやアルコールなどの嗜好品の過剰摂取
  • 寝室の温度、湿度、騒音、光などの環境要因
  • 特定の薬剤の副作用

多くの場合、これらの要因が複合的に絡み合って不眠症を引き起こします。原因を丁寧に見極めることが、適切な治療への第一歩となります。

関連記事: 不眠症の7つの原因と自宅でできる改善法

睡眠障害とは〜不眠症を含む広い概念

睡眠障害は、睡眠に関連するあらゆる問題を包括する広い概念です。不眠症も睡眠障害の一種ですが、睡眠障害には不眠症以外にも数多くの疾患が含まれます。

国際的な分類では、睡眠障害は大きく以下のようなカテゴリーに分けられます。

  • 不眠症
  • 睡眠関連呼吸障害(睡眠時無呼吸など)
  • 中枢性過眠症(ナルコレプシーなど)
  • 概日リズム睡眠・覚醒障害
  • 睡眠時随伴症(夢遊病、悪夢障害など)
  • 睡眠関連運動障害(むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害など)

つまり、「眠れない」という症状があっても、それが必ずしも不眠症とは限らないのです。

不眠症と睡眠障害の関係性

不眠症は睡眠障害の一種です。しかし、睡眠障害には不眠症以外にも多くの疾患が含まれます。そして重要なのは、不眠症以外の睡眠障害でも「眠れない」という症状が現れることがあるという点です。

睡眠時無呼吸

中途覚醒が頻繁に起こります。

むずむず脚症候群

入眠困難が生じます。

概日リズム睡眠・覚醒障害

望ましい時間帯に眠れないという問題が起こります。

これらはすべて「眠れない」という共通の症状を示しますが、原因も治療法もまったく異なります。だからこそ、正確な診断が非常に重要なのです。

不眠症と間違えやすい代表的な睡眠障害

不眠のような症状を示す疾患はいくつかあり、原因や治療法が異なります。ここでは代表的な4つを紹介します。

① 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)

睡眠中に呼吸が止まる・浅くなる病気で、いびきや日中の強い眠気が特徴です。

肥満や小顎、高血圧、糖尿病との関連が深く、放置すると心疾患のリスクが高まります。診断には睡眠検査(PSG)が必要で、CPAP療法が行われます。

関連記事: 精神科医が教える睡眠時無呼吸症候群とCPAP治療の重要性

② レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

夕方から夜にかけて脚にむずむず・ほてり感が生じ、じっとしていられず眠れなくなる病気です。鉄欠乏や妊娠、透析、薬の副作用が関係し、鉄剤やドパミン製剤などで治療します。

③ 周期性四肢運動障害

睡眠中に足が無意識にピクピク動く疾患で、睡眠が浅く中途覚醒を繰り返すのが特徴です。本人は自覚がないことが多く、むずむず脚症候群と併発することもあります。

④ 概日リズム睡眠・覚醒障害

体内時計がずれてしまい、眠りたい時間に眠れない・起きたい時間に起きられない状態です。若年層では夜型(睡眠相後退型)、高齢者では早寝早起き(前進型)が多く、光療法やメラトニン製剤で体内リズムを整えます。

精神疾患に伴う睡眠障害

精神疾患と睡眠障害は密接に関係しており、特にうつ病とPTSD(心的外傷後ストレス障害)では高い頻度で併発します。

うつ病と睡眠障害

うつ病の患者では不眠早朝覚醒中途覚醒過眠など多様な睡眠障害がみられます。睡眠障害は抑うつ状態を悪化させ、うつ病が睡眠の質を下げるという悪循環が生じやすいのが特徴です。治療では、抗うつ薬と睡眠改善の併用が重要であり、場合によっては睡眠時無呼吸などの合併も精査が必要です。

その他の精神疾患と睡眠障害

その他の精神疾患においても、悪夢・入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒などが頻繁に認められます。主疾患に不随するただの不眠症状と診断されて、睡眠薬だけで治療が継続されているために、睡眠障害が潜んでいるのに見落とされていることがあります。そのため当然ながら、日中の倦怠感や眠気、自律神経症状は睡眠薬を使用するだけでは改善しません。睡眠薬による治療だけでは改善しない場合にも、念のために一度睡眠検査をしておくことをおすすめします。

関連記事: 「CPAPをやめたい...」安全な中止方法と代替治療の選択肢

どの診療科を受診すべきか〜当院では、睡眠障害のあらゆる原因に対応しています

当院では、睡眠障害の原因を心と体の両面から総合的に診断・治療しています。

精神科・心療内科を併設しているため、単なる不眠だけでなく、精神的ストレスやうつ、不安障害などが原因となる睡眠障害にも専門的に対応可能です。

主な対応可能な症状・疾患

  • 不眠症、熟眠障害、概日リズム障害など幅広い睡眠トラブル
  • うつ病、不安障害、ストレス性の睡眠障害
  • 睡眠時無呼吸など、呼吸に関連する睡眠障害
  • むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害などの睡眠障害

当院の強みは、睡眠を専門とする精神科医が在籍していることです。

そのため、「眠れない原因が身体なのか、心の不調なのか」を正確に見極め、

必要に応じて心理面の治療と身体的アプローチを組み合わせた最適な治療計画を立てることができます。

いいだメンタルペインクリニックでは、睡眠の質を根本から改善するための診療体制を整えています。

まずはお気軽にご相談ください。

まとめ〜正しい理解が適切な治療への第一歩

「眠れない」という症状は、決して軽視すべきものではありません。

不眠症と睡眠障害の違いを理解し、自分の症状がどのタイプに当てはまるのかを見極めることが、適切な治療への第一歩となります。

睡眠は健康の基盤です。質の良い睡眠を取り戻すことで、日中のパフォーマンスが向上し、心身の健康が保たれます。

一人で悩まず、適切なサポートを受けながら、より良い睡眠を目指していきましょう。

睡眠の問題でお悩みの方やCPAP治療を検討中の方は、ぜひいいだメンタルペインクリニックにご相談ください。

著者情報

いいだメンタルペインクリニック

精神科・心療内科

副院長 安田 麻美

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会専門医・指導医
  • 日本睡眠学会総合専門医
  • 日本老年精神医学会専門医・指導医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 北海道女性医師の会 理事