ストレスで眠れない原因と主な症状|ストレス性不眠と睡眠障害の違い

2025.12.03精神科・心療内科

ストレスによる不眠の原因とメカニズム

人間関係のストレスは私たちの心身に大きな影響を与え、睡眠の質を低下させることが知られています。

現代社会では、3人に1人が何らかの睡眠障害に悩まされていると言われています。

ストレスが睡眠に影響するメカニズムは複雑です。ストレスを感じると、脳内では「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。このホルモンは本来、朝に高く夜に低くなるリズムがあるのですが、強いストレス下では夜間も高い状態が続き、体が「目覚めモード」から切り替わらなくなってしまうのです。

ストレスがかかった状態では交感神経が優位になり、脈が速くなったり血圧が上がったりします。本人はあまり自覚がなくても、身体はずっと緊張モードのままとなり、これが「布団に入っても気持ちが落ち着かない」原因のひとつです。

この記事では、人間関係のストレスがどのように不眠症を引き起こすのか、ストレス性不眠と睡眠障害の違いについて解説します。

人間関係のストレスによる不眠症の主な症状

人間関係のストレスによる不眠症には、いくつかの特徴的な症状があります。

入眠障害(寝つきの悪さ)

ベッドに入っても、職場での出来事や人間関係のことが頭から離れず、なかなか眠りにつけない状態です。30分以上寝つけないことが週に3日以上あり、それが1ヶ月以上続く場合は要注意です。

中途覚醒(夜中に何度も目が覚める)

一度は眠りについても、夜中に何度も目が覚めてしまう状態です。目が覚めると再び人間関係の悩みが頭をよぎり、なかなか再入眠できないことが特徴です。

日本人の成人における不眠症状の中で最も多く見られるタイプとされています。

早朝覚醒(予定より早く目覚める)

予定していた起床時間よりも2時間以上早く目が覚めてしまい、そのまま再び眠ることができない状態です。

この症状はうつ病との関連も指摘されており、人間関係のストレスが長期化すると、うつ状態を伴うことがあります。

熟眠障害(眠った気がしない)

十分な時間眠っているはずなのに、「ぐっすり眠れた」という感覚が得られず、朝起きても疲れが取れていない状態です。

人間関係のストレスによって睡眠の質が低下し、深い睡眠(ノンレム睡眠)が十分に取れていないことが原因です。

人間関係のストレスが不眠を引き起こす主な原因

人間関係のストレスが不眠を引き起こす原因は多岐にわたります。以下に主な原因を詳しく見ていきましょう。

職場の人間関係

職場での人間関係は不眠の最も大きな原因の一つです。

特に問題となるのは以下のような状況です:

  • 上司との関係:威圧的な態度や言動、責任のなすりつけ、不明確な指示など
  • 同僚との関係:グループ化による孤立、陰口、手柄の横取りなど
  • 部下との関係:指示を聞かない、反抗的な態度、コミュニケーション不足など

家庭内の人間関係

家庭内の人間関係も不眠の大きな原因となります。パートナーとの関係、親子関係、介護の問題など、様々な要因が睡眠に影響を与えます。

特に現代社会では、共働き世帯の増加により、仕事と家庭の両立によるストレスが増大しています。家事や育児の分担をめぐる対立、コミュニケーション不足などが、就寝時の不安や緊張につながることがあります。

SNSなどのオンライン上の人間関係

現代特有の問題として、SNSなどのオンライン上の人間関係によるストレスがあります。

「いいね」の数や他者との比較、炎上を恐れる気持ち、返信の義務感など、オンライン特有のプレッシャーが睡眠前の不安を高めることがあります。

就寝前のスマートフォン使用は、ブルーライトの影響だけでなく、こうした心理的ストレスによっても睡眠の質を低下させるのです。

人間関係のストレスによる不眠を放置するリスク

人間関係のストレスによる不眠を放置すると、様々な健康上のリスクが生じます。

睡眠不足が続くと、免疫機能の低下、集中力・判断力の低下、感情のコントロールが難しくなるなどの問題が生じます。さらに長期化すると、うつ病や不安障害などの精神疾患のリスクも高まります。

また、不眠が続くことで、さらに人間関係が悪化するという悪循環に陥ることもあります。睡眠不足によるイライラや集中力低下が、新たな対人関係のトラブルを引き起こすのです。

関連記事: 不眠症の7つの原因と自宅でできる改善法

ストレス性不眠と他の睡眠障害との違い

「夜眠れない」という症状だけで、すべてが不眠症とは限りません。実は、難治性の不眠に悩む方の中には、不眠症以外の睡眠障害が隠れていることがあります。

「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」

就寝中に呼吸が止まったり浅くなったりする疾患です。「いびきがひどい」「寝ているときに息が止まる」などの症状があり、熟睡感の欠如や日中の強い眠気が特徴です。

「レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)」

脚のむずむきや不快感により入眠困難が生じる障害です。じっとしていると症状が悪化し、動かすと楽になるという特徴があります。

「周期性四肢運動障害」

睡眠中に頻回な四肢の不随意運動が生じることで睡眠の質が低下する障害です。本人は自覚していないことが多く、パートナーや家族による確認が重要です。

「概日リズム睡眠・覚醒障害」

体内時計のリズムが乱れることで起こる障害です。夜型の生活が続いたり、交代制勤務などで睡眠時間が不規則になると発症しやすくなります。

当院の睡眠外来の特徴

不眠の背景にはメンタル面だけでなく、睡眠時無呼吸やレストレスレッグス症候群など、他の睡眠障害が隠れているケースもあると考えます。そのため当院では、まずは丁寧なカウンセリングを行い、睡眠の質・日中の眠気・いびきの有無・生活リズムなどを総合的に評価します。特に「いびきが強い」「日中に強い眠気がある」などのサインがみられる場合は、閉塞性睡眠時無呼吸の可能性を疑い、専門的な検査をご案内しています。検査後、必要に応じてCPAP療法まで一貫して対応しています。

関連記事: いびき・睡眠時無呼吸の治療に使われるCPAPとは?

まとめ:人間関係のストレスによる不眠を乗り越えるために

人間関係のストレスによる不眠は、現代社会において非常に多くの方が抱える問題です。しかし、適切な対策を取ることで、症状の改善は十分に可能です。

まずは、睡眠環境の整備や入眠前のリラクゼーション、規則正しい生活リズムの確立など、生活習慣の見直しから始めてみましょう。それでも改善が見られない場合は、専門医への相談を検討してください。不眠の背景には、単なるストレスだけでなく、睡眠時無呼吸やレストレスレッグス症候群など、他の睡眠障害が隠れていることもあります。

当院の睡眠外来では、不眠症だけでなく、睡眠時無呼吸や睡眠障害など、さまざまな睡眠の問題に対応しています。睡眠の問題でお悩みの方は、ぜひいいだメンタルペインクリニックにお気軽にご相談ください。

著者情報

いいだメンタルペインクリニック

精神科・心療内科

副院長 安田 麻美

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会専門医・指導医
  • 日本睡眠学会総合専門医
  • 日本老年精神医学会専門医・指導医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 北海道女性医師の会 理事