精神科医が教える睡眠時無呼吸とCPAP治療の重要性
2025.10.30精神科・心療内科

いびき・睡眠時無呼吸の治療に使われるCPAPとは?
睡眠時無呼吸とは?症状と健康リスク
睡眠時無呼吸は、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりする疾患です。
いびきや日中の強い眠気、集中力の低下などの症状を引き起こし、放置すると高血圧や心筋梗塞、脳卒中などの生活習慣病のリスクを高め、危険です。
多くの場合は「閉塞性睡眠時無呼吸」で、舌の落ち込みや気道の狭まりが原因です。早期診断と適切な治療で、健康被害を防ぐことができます。
CPAP治療とは?睡眠時無呼吸の標準治療法
CPAP治療は、睡眠時無呼吸の最も効果的な治療法の一つです。当院では鼻にマスクを装着する「経鼻的持続陽圧呼吸療法」を導入しております。
この治療法は、睡眠中に専用のマスクを鼻に装着し、CPAP装置から送られる一定の圧力の空気で気道を広げ、呼吸を正常に保つというシンプルながら画期的な方法です。
CPAP機器は非常に小型で音も静かになっており、マスクも多様なタイプが用意されています。
- ネーザルタイプ(鼻のみを覆うもの)
- ピロータイプ(鼻孔に直接装着するもの)
- フルフェイスタイプ(鼻と口の両方を覆うもの)
当院の睡眠外来では、睡眠時無呼吸に対するCPAP治療(経鼻的持続陽圧呼吸療法)を行ってい
など、患者さんの状態や好みに合わせて選択できます。
CPAP治療の効果は、多くの場合、使用開始から数日以内に実感できます。特に重症の患者さんほど、効果をはっきりと感じられることが多いようです。
CPAP治療のメリットとデメリット
CPAP治療には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。治療を検討される際には、両面を理解しておくことが大切です。
CPAP治療の主なメリット
睡眠の質の向上
無呼吸やいびきが改善されることで、深い睡眠をとれるようになります。
その結果、自律神経のバランスが整い、日中の眠気や疲労感が軽くなり、集中力や記憶力の向上にもつながります。
生活習慣病の改善
高血圧や糖尿病、脂質異常症、動脈硬化など生活習慣病の改善も期待できます。
精神面への良い影響
睡眠の質が向上することで、精神面にも良い影響があります。セロトニンやドーパミンといった脳内ホルモンの分泌が改善し、うつ症状や不安感の軽減が期待できます。
CPAP治療の主なデメリット
一方で、CPAP治療にはいくつかのデメリットもあります。
マスク装着による不快感
鼻の周りが赤くなったり、かぶれたりすることがあります。
鼻や喉、目が乾燥する
装置から送り込まれる空気によって、鼻や喉、目が乾燥することもあります。これらの症状は、マスクの形状や装着方法、加湿器の使用などで改善できることが多いです。
持ち運びが不便
特に旅行や出張が多い方にとっては課題となることがあります。しかし、最近では小型で持ち運びやすい機種も増えてきています。
CPAP治療の流れ
CPAP治療を始めるまでには、いくつかのステップがあります。まずは睡眠時無呼吸の正確な診断が必要です。
診断からCPAP治療開始までの流れ
問診
日中の眠気やいびきの有無、睡眠の質などについてお聞きします。
自宅簡易検査
指先と腕に小型の測定器を装着して一晩眠るだけで、睡眠中の酸素飽和度や呼吸状態を測定できます。この結果から睡眠時無呼吸が疑われる場合は、より詳細な検査へと進みます。
自宅精密検査
当院では最新の自宅精密検査機器(ポータブル睡眠ポリグラフ検査システム)を導入しております。従来は入院(通常は1週間程度)が必要でしたが、入院することなくご自宅で一晩眠るだけで無呼吸や睡眠の質を詳細に測定できます。
仕事や学校などの理由で検査入院が難しい方、または手軽に精度の高い検査を受けたい方に最適な検査方法です。
CPAP治療(経鼻的持続陽圧呼吸療法)
検査の結果、無呼吸低呼吸指数(AHI)が一定以上であれば、CPAP治療の適応となります。
CPAP治療はいつまで続ける必要があるのか
治療を続ける期間は人によって異なります。
体重を減らしたり、生活習慣を改善したり、場合によっては手術などのほかの治療を併用することで、症状が軽くなることもあります。
ただし、多くのケースでは、特に中等度〜重度の睡眠時無呼吸では、症状を安定させるために継続的なCPAP治療が必要です。
CPAP治療の保険適用と費用について
日本では、一定の基準を満たせば、CPAP治療は健康保険が適用されます。
CPAP治療が保険が適用される条件
無呼吸低呼吸指数(AHI)の基準が一定以上ある。
簡易検査で1時間あたり40回以上、精密検査で1時間あたり20回以上の無呼吸・低呼吸が確認された場合保険が適用されます。
毎月の通院が必須
定期的な診察で治療効果や副作用の確認などを行います。
適切な使用時間
CPAP装置は、1日4時間以上の使用が推奨されています。
使用が不十分な場合は、治療効果が下がり、様々な健康リスクが増悪する可能性があります。
CPAP治療の費用
CPAP装置は医療機関からレンタルする形となり、3割負担の方で月額5,000円前後の自己負担となります。
精神科医の視点から見たCPAP治療の重要性
睡眠時無呼吸は、質の高い睡眠を確保できないことから、気分の落ち込みや意欲低下、不安感を引き起こしやすく、うつ病を含む精神疾患の発症や悪化を助長する場合があります。
睡眠時無呼吸の症状には、集中力低下、意欲減退、イライラ感、気分の不安定さなどが含まれますが、これらはうつ病や不安障害の症状と重なる部分が多いです。そのため、精神科を受診される方には、睡眠の質についても詳しく問診し、必要に応じて睡眠時無呼吸の簡易検査を行っております。
CPAP治療によって睡眠の質が向上すると、脳の機能も改善します。記憶力や集中力の向上だけでなく、気持ちも落ち着くようになり、全体的な精神状態が安定します。
まとめ:快適な毎日は良質な睡眠から
睡眠時無呼吸は、放置すると生活の質を著しく低下させるだけでなく、重大な健康リスクをもたらす疾患です。しかし、適切な診断と治療により、多くの症状は改善可能です。
CPAP治療は、睡眠時無呼吸の標準治療として確立されており、使用を継続することで睡眠の質が向上し、日中の眠気や疲労感が軽減します。さらに、生活習慣病のリスク低減にも寄与します。
うつ症状や不安感に悩む方の中には、睡眠時無呼吸が隠れている場合も少なくありません。
睡眠の問題でお悩みの方やCPAP治療を検討中の方は、ぜひいいだメンタルペインクリニックにご相談ください。
著者情報
いいだメンタルペインクリニック
精神科・心療内科
副院長 安田 麻美
- 精神保健指定医
- 日本精神神経学会専門医・指導医
- 日本睡眠学会総合専門医
- 日本老年精神医学会専門医・指導医
- 日本医師会認定産業医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 北海道女性医師の会 理事