睡眠外来で受けられるいびき治療と選び方

2025.10.29精神科・心療内科

いびきの悩みと健康リスク

夜中に何度も起きてしまう。朝起きても疲れが取れない。パートナーからいびきがうるさいと言われる。

実は、これらの症状は単なる睡眠の質の問題ではなく、睡眠時無呼吸などの睡眠障害のサインかもしれません。日本人の約5人に1人が何らかの睡眠に関する問題を抱えているといわれており、その中でも特に多いのがいびきの悩みです。

いびきは単なる音の問題と思われがちですが、実はいびきの約20%は睡眠時無呼吸の症状であることが知られています。放置すると高血圧、心疾患、糖尿病、脳卒中などの深刻な健康問題を引き起こすリスクが高まるため危険です。

睡眠時無呼吸は、睡眠中の呼吸が不十分な状態を示します(昔は睡眠時無呼吸症候群と呼ばれていましたが、新しい睡眠障害国際分類では症候群とは呼称しなくなりました)。脳からの呼吸の信号が正常に発信されない中枢性無呼吸と、気道が部分的または完全に塞がれることで発生する閉塞性無呼吸がありますが、どちらも酸素不足や睡眠の質の低下を引き起こします。一般的に多く認められることが多いのは後者の閉塞性睡眠時無呼吸です。

  • 日中の強い眠気
  • 大きないびき
  • 起床時の頭痛
  • 夜間に頻繁に目が覚める
  • 疲労感が取れない

これらの症状がある場合は、睡眠時無呼吸の可能性があります。早めの専門医への相談をおすすめします。

睡眠外来とは?専門医による診療の特徴

睡眠外来は、不眠症や睡眠時無呼吸などの睡眠に関する様々な悩みに対応する専門外来です。一般的なクリニックでは睡眠薬を処方されるだけで根本的な問題解決ができないケースが多いのに対し、睡眠外来では、患者さんのライフスタイルや睡眠障害の発症原因をヒアリングし、専門機器を用いた検査や治療も可能です。

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当院の睡眠時無呼吸の治療と特徴

睡眠時無呼吸の治療には、いくつかの方法があります。症状の程度や原因によって、最適な治療法は異なります。ここでは、主な治療法とその特徴をご紹介します。

1. 自宅簡易検査・精密検査

睡眠中の呼吸障害が疑われる場合、自宅で簡単な検査が可能です。最新の自宅簡易検査機器を使用し、指先と腕に電子機器を装着して一晩眠るだけで、睡眠呼吸障害の検査ができます。

さらに詳細な検査が必要な場合は、ポータブル睡眠ポリグラフ検査システムを使用した自宅精密検査も可能です。入院せずに自宅で一晩眠るだけで、無呼吸と睡眠の詳細な評価ができます。仕事や学校の都合で長期入院が難しい方に最適な検査方法です。

2. CPAP治療(経鼻的持続陽圧呼吸療法)

睡眠時無呼吸の診断が確定したら、CPAP治療を開始します。鼻に装着したマスクから空気を送り込み、その圧で空気の通り道を確保する治療法です。

CPAP治療を開始すると睡眠中の無呼吸やいびきが軽減し、睡眠の質がよくなるため、日中の眠気や疲労感、集中力や注意力の低下などの症状が改善します。最初はマスクを装着して眠ることに違和感もあるかもしれませんが、毎日装着しているうちに多くの患者さんが慣れて、その効果を実感されています。

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3. 薬物治療

必要に応じて、睡眠衛生指導の補助として、最低限の睡眠薬を使用します。睡眠薬には様々な種類があります。

患者さんの症状と薬の作用時間・特性から、最適なものを選択します。薬を希望しない方には、薬物治療なしでの治療も相談可能です。

無呼吸の重症度による選択

睡眠時無呼吸の治療法は多岐にわたります。どの治療法を選ぶべきか迷った場合は、以下のポイントを参考にしてみてください。

  • 軽度:生活習慣の改善、睡眠衛生指導
  • 中等度~重度:生活習慣の改善、睡眠衛生指導、CPAP療法

重症度の判定には、専門的な検査が必要です。自己判断せず、まずは睡眠外来を受診して、適切な検査を受けることをおすすめします。

まとめ:より良い睡眠のために

睡眠時無呼吸は、放置すると健康に深刻な影響を及ぼす可能性がある疾患です。しかし、適切な診断と治療を受けることで、症状の改善や健康リスクの低減が期待できます。

睡眠外来では、睡眠に関する様々な悩みに対して、専門的な知識と経験を持った医師が、患者さん一人ひとりに合った治療法をご提案します。日常生活状況の問診・睡眠衛生指導、睡眠日誌、自宅での検査、薬物治療、CPAP治療など、症状や原因に応じた多様な治療法があります。

いびきや睡眠の悩みがある方は、ぜひいいだメンタルペインクリニックにご相談ください。

著者情報

いいだメンタルペインクリニック

精神科・心療内科

副院長 安田 麻美

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会専門医・指導医
  • 日本睡眠学会総合専門医
  • 日本老年精神医学会専門医・指導医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 北海道女性医師の会 理事