椎間板ヘルニアでやってはいけない7つの行動と対処法

2025.10.23ペインクリニック内科・麻酔科

椎間板ヘルニアとは?痛みの原因と基本知識

椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッション材(椎間板)が飛び出して神経を圧迫することで、腰や足に痛みやしびれを引き起こす疾患です。特に腰椎部分に発症することが多く、日常生活に大きな支障をきたします。

私が診療で出会う患者さんの多くは、「急に腰が痛くなって、足までしびれが走るようになった」と訴えられます。この症状、実は珍しいものではないのです。

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、腰痛は男女ともに多く見られる症状であり、椎間板ヘルニアがその原因となっているケースも少なくありません。

椎間板は若い頃は弾力があるのですが、年齢を重ねるにつれて弾力が失われ、圧力がかかると壊れやすくなります。特に腰椎は頭や胴体、腕などの重みを支えているため、椎間板に症状が出やすい傾向があるのです。

では、椎間板ヘルニアを悪化させないために、どのような行動を避けるべきなのでしょうか?

椎間板ヘルニアを悪化させる行動①:重い物を持ち上げる

椎間板ヘルニアと診断された、椎間板ヘルニアの疑いがある方で、最も避けるべき行動は、重い物を持ち上げることです。特に中腰の姿勢での持ち上げは厳禁です。

重い物を持ち上げると、椎間板に大きな圧力がかかります。この圧力は、すでに飛び出している髄核をさらに押し出し、神経への圧迫を強めてしまいます。

どうしても物を持ち上げる必要がある場合は、膝を曲げてしゃがみ、背筋をまっすぐに保った状態で持ち上げましょう。それでも5kg以上の物は避け、必要な場合は誰かに手伝ってもらうことをお勧めします。

重いものを持つことで、ヘルニアが悪化するだけでなく、新たな椎間板の損傷を引き起こす可能性もあります。

椎間板ヘルニアを悪化させる行動②:長時間の前かがみ姿勢

デスクワークやスマートフォンの操作など、長時間の前かがみ姿勢は椎間板ヘルニアの大敵です。この姿勢は椎間板への圧力を増加させるだけでなく、背骨の自然なS字カーブを崩してしまいます。

前かがみの姿勢が続くと、椎間板の後方に圧力がかかり続け、すでに弱っている部分からさらに髄核が飛び出しやすくなります。これにより、神経への圧迫が強まり、痛みやしびれが悪化するのです。

正しい姿勢を保つためには、骨盤を立てて座り、背筋を伸ばすことが重要です。背もたれのある椅子を使用し、モニターの高さを目線に合わせることで、自然と良い姿勢が保てます。

また、30分ごとに立ち上がって軽いストレッチをする習慣をつけましょう。これは椎間板への負担を軽減するだけでなく、血流も改善します。

椎間板ヘルニアを悪化させる行動③:激しい運動やスポーツ

椎間板ヘルニアを発症している時は、激しい運動やスポーツは控えるべきです。特にジャンプ、ランニング、急激なひねりを伴う動きは椎間板に大きな負担をかけます。

テニスやゴルフ、バスケットボールなどは腰への負担が特に大きいスポーツです。

では、どのような運動が適しているのでしょうか?ウォーキングや水泳(特に背泳ぎ)、ヨガ(過度なポーズを避ける)などの低衝撃の運動がお勧めです。

これらの運動は、腰への負担を最小限に抑えながら、筋力を維持し、血流を促進する効果があります。

運動を再開する際は、必ず医師やリハビリの専門家に相談し、自分の状態に合ったプログラムを組むことが大切です。焦らず、徐々に強度を上げていくことが、長期的な回復への近道なのです。

椎間板ヘルニアを悪化させる行動④:喫煙

意外に思われるかもしれませんが、喫煙は椎間板ヘルニアの悪化要因の一つです。

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があり、椎間板への血流を阻害します。椎間板は体の中でも栄養供給が乏しい組織であり、喫煙によってさらに酸素や栄養の供給が減少すると、修復能力が低下してしまうのです。

禁煙は椎間板ヘルニアの症状改善だけでなく、全身の健康にも良い影響を与えます。禁煙外来や禁煙補助薬なども活用しながら、ぜひチャレンジしてみてください。

椎間板ヘルニアを悪化させる行動⑤:不適切なマッサージ

椎間板ヘルニアの痛みを和らげようと、マッサージを受ける方も多いでしょう。しかし、専門知識のない施術者による強いマッサージは、症状を悪化させる危険性があります。

特に急性期の椎間板ヘルニアに対する強い圧迫や揉みほぐしは、炎症を悪化させ、痛みを増強させることがあります。

特に腰椎部分に直接強い圧をかけるマッサージは危険です。

では、どのようなケアが適切なのでしょうか?椎間板ヘルニアの場合は、理学療法士や医師の指導のもとでの、緩やかなストレッチや温熱療法が効果的です。

マッサージを受ける場合は、必ず自分の状態を施術者に伝え、椎間板ヘルニアの知識がある専門家を選ぶことが重要です。痛みを感じるような強い刺激は避け、心地よいと感じる程度の施術にとどめましょう。

椎間板ヘルニアを悪化させる行動⑥:体を冷やす

椎間板ヘルニアの症状管理において、体温管理は意外と重要な要素です。特に腰部の冷えは、筋肉の緊張を高め、血流を悪化させることで痛みを増強させる可能性があります。

冷たい床に直接座ったり、冷房の風が直接当たる環境で長時間過ごしたりすることは避けるべきです。

寒い季節になると椎間板ヘルニアの症状が悪化する患者さんが増える傾向があります。これは寒さによる筋肉の緊張と血流低下が関係していると考えられます。

腰部を適度に温めることで、筋肉の緊張が緩和され、血流が改善します。これにより、痛みの軽減が期待できます。

ただし、急性期の炎症がある場合は、むしろ冷却が効果的なこともあります。自分の状態に合わせた温度管理を医師に相談することをお勧めします。

腰部を守るためには、薄手の腹巻やサポーターの使用も効果的です。体を冷やさない生活習慣を心がけましょう。

椎間板ヘルニアを悪化させる行動⑦:痛みを我慢する

「痛みは我慢するもの」という考えは、特に日本人に多く見られますが、椎間板ヘルニアにおいては危険な選択です。

痛みは体からの警告信号です。この信号を無視して活動を続けると、椎間板の損傷がさらに進行し、より深刻な状態に陥る可能性があります。

適切な痛みのコントロールは、回復過程において非常に重要です。痛みがある時は、無理をせず休息を取り、医師の指示に従った適切な鎮痛薬を使用することが大切です。

また、痛みの変化は病状の変化を反映していることが多いため、痛みのパターンや強さの変化は必ず医師に報告しましょう。

椎間板ヘルニアの効果的な対処法と回復への道筋

薬物療法や神経ブロック注射等の保存療法で十分に改善が見込めるケースが多い一方で、痛みやしびれが強く、日常生活に大きな支障をきたしている方には手術治療が選択肢となります。

当院では、体への負担を最小限に抑えた日帰り手術を行っています。小さな切開または低侵襲のアプローチでヘルニアを処理するため、全身麻酔や長期入院の必要がなく、手術当日にご帰宅いただけます。これにより、早期の社会復帰・仕事復帰が可能となります。


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まとめ:椎間板ヘルニアと上手に付き合うために

椎間板ヘルニアは決して珍しい疾患ではなく、適切な対応と生活習慣の改善により、多くの場合は症状のコントロールが可能です。

今回ご紹介した7つの行動を避けることで、症状の悪化を防ぎ、回復への道筋をつけることができます。

椎間板ヘルニアの治療は、医師、理学療法士、そして何より患者さん自身の三位一体の取り組みが重要です。専門家の指導を受けながら、自分の体と向き合い、無理のない範囲で活動を続けることが大切です。

もし椎間板ヘルニアでお悩みなら、ぜひいいだメンタルペインクリニックにご相談ください。

著者情報

いいだメンタルペインクリニック

ペインクリニック内科・麻酔科

理事長 飯田 高史

  • 医学博士
  • 麻酔科標榜医
  • 日本専門医機構認定麻酔科専門医
  • 日本麻酔科学会麻酔科認定医
  • 日本ペインクリニック学会専門医